第1話〜助けた相手が店に来た〜


「醤油にみりんに料理酒…ニンニク生姜にっと、後必要なものは…」


俺は現在、店に使う調味料や具材の買い出しに来ている。本日はテスト終わり、お昼帰りなのだ。

休まなくとも合法的にお昼で帰れるのは素晴らしい。そろそろ調味料等が心元なくなって来たからな。


移動手段はバイクだ。本当は車がいいのだが、取りに行く時間が無い。


「やめ…っ辞めてください。」


「いいじゃんよ〜ちょっとぐらい。楽しませろよ…」


「厄介事は辞めてもらいたいけど…おばあちゃんが言ってたしなぁ…」

誰かが困っていたら助けること。それが巡り巡って、自分に返ってくるのよ、とよく言っていたものだ。

別に他人など無理して助けることは無いと思ってはいるが、おばあちゃんが間違ったことを俺に教えたことは無い。ので、めんどくさいので助けることとする。ついでに店の宣伝もしよう。


「おいおいお兄さん達、嫌がる女を無理矢理連れてって楽しいかい?どうせならもっとノリノリの女の子選べばいいのに」


「ああん?んだてめぇ?文句あんのか?」


「ああ、文句あるね。なんぱ待ちの女の子ならたっくさんいたぜ?その女の子に引けを取らん子もいたぞ?」


「あ?だからなんだよ。俺たちはこいつがいいんだよ」


そう言って詰め寄ってくる男。でもこいついいのかなぁ…ここ、大勢人が居ると言うのに。


「いいのか?俺に手を出せば、あんたらが悪者だ。明日には警察のお世話だぜ?」


「ちっ…てめぇが言ってた女、どこにいる?」


「ああ、それなら…駅前の、噴水広場わかるか?そこの近くに居たぞ?移動していたとしても、その付近だと思うぞ。」


そう告げると、男たちは女の子を離して逃げるように消えていった。一件落着…では無いんだな、これが。


なぜって?そりゃあ、なんぱ待ちの女の子なんか居ないからさ。バレたらちょっとやばい、その前に逃げなければ。


「あの…助けて下さり、ありがとうございました。」


声が聞こえたのでそちらを振り向いた。一般には可愛いと分類される類の顔だろう、厄介な絡まれ方をするのも納得出来る。


「ん?ああ、構わんよ。それより早く離れた方がいい。さっき言ってたことは全部嘘だからね。バレてここに戻ってこられても困る。」


「は、はい。あの、お名前は?貴方、三雲学園の生徒…ですよね?」


「……ああ、俺は明星怜侑だ。学校で見ても近寄るなよ、頭のおかしいやつ扱いされたくなければな。それから、気が向いたらうちの店に来てくれ。」


そう言って名刺を渡す。住所が書かれている。調べれば出てくるだろう。


相手の返事を待つことも無く、俺はその場を立ち去った。途中振り返ったが、どうやらタクシーに乗って帰るようだ。あれなら安心できるな、よし。


さてさて、買い出しの続きだな。時間を使いすぎた、手短に行こう。

携帯で時間を確認した俺は、スーパーに向けて急いで走り出すのだった。


「って、助けてもらったでしょう?そのお礼です。」


「ああ、確かに助けたが…よく来たな。」


「来いと言ったのはそちらでしょうに。それより、お腹がすいているのでごはんをください。おすすめを。」


「はいはい、なら今日は海鮮定食がおすすめだけど、それにしますか?」


「では、それで。」

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