第8章 第二次琵琶湖決戦
-117- 私だけのDMD
「戻って来た……東京!」
都会の
どれもそこまで好きではないけど、帰って来たなぁ~って感じがする!
さて、まず向かうべきは……自宅?
いやいや、自宅はモエギのスタッフさんに任せているから長期間空けていても特に不安はない。
それに1人暮らしだし急いで帰っても待っている人はいない。
ならばやっぱり……マシンベース?
いえいえ、それも今回に限っては違う。
私の新型DMDの開発や組み立てはモエギの秘密ドックで行われているんだ!
ということで、新潟から東京まで送ってくれたヴァイオレット社のスタッフさんたちにお礼をした後、今度はモエギ・コンツェルンのスタッフさんたちの運転する車に乗り換える。
これから向かう秘密ドックは今となってはそこまで秘密じゃないけど、かつてはアイオロス・プロジェクトの中心となった場所で、そこでアイオロスとアイオロス・ゼロが組み上げられたらしい。
だから、アイオロス・ゼロの後継機でもある私の専用機を組み上げるならここしかないと育美さんは言っていた。
まあ、実際はそういう伝統的な理由より新型機に使う新素材の加工やパーツの製造にモエギ・コンツェルン全体を動かしているから、組み立てもモエギの施設でやった方が楽というのが大きい。
それと今回の機体の組み立てにはかつてアイオロスシリーズの開発に関わったメカニックさんたちも協力してくれているから、使い慣れたドックの方が作業効率が上がるというのもあるかも。
なんてったって、育美さんもアイオロスシリーズの開発に関わっているんだしね!
車に揺られること数十分。
都心からは少し離れたところにある小規模な研究施設に到着した。
ここは普段からいろんな研究に使われているけど、その内部には多くの社員が知らない秘密のドックがある……はず!
私、ここに来るのは初めてなんだよねぇ。
新潟に行く前は普通にマシンベースで新型を開発していたし、その段階では完璧な組み上げには至ってなかった。
いよいよ見ることが出来る……その姿を!
「育美さん、お久しぶりです!」
「蒔苗ちゃん! 帰って来たのね!」
育美さんが私をギューッと抱きしめる。
すべてを話してくれたあの日以来、スキンシップが激しくなっている気がする。
まあ、私としては大歓迎なんだけどね!
「新型機はもう組み上がってるんですよね?」
「うん! 武装はまだ取り付けてないけど、機体本体は完成してるわ!」
「見せてもらっていいですか?」
「そりゃもちろん!」
秘密ドックは地下にある。
エレベーターに乗り、秘密のコードを入力することでボタンの存在しない地下への道が開く。
「ようこそ、アイオロス・プロジェクト発祥の地へ」
育美さんに導かれて足を踏み入れたドックには1機のDMDが堂々と立っていた。
装甲はゼロよりも面積と厚みが増し重厚感がある。
機体カラーは白と萌葱色を継承しつつ、ところどころに黒いラインが入ることでより引き締まった印象になっている。
頭部には翼を思わせるようなアンテナ。
カメラアイはバイザー型から2つの目、ツインアイタイプになっている。
アイオロス・ゼロを
スマートなスピードタイプだったアイオロスシリーズのイメージを覆すようなシルエットは、何も知らない人が見たら急な路線変更に見えるだろうなぁ。
でも、この機体の特徴を知っている私からすればこの変化は当然のものと思える。
「上手いこと新フレームを組み込めたみたいですね!」
「まあね! 異常なまでに頑丈な素材だったけどグラビティウイングと似ている点もあったし、骨自体はこれまでに討伐した2体の個体から入手後、研究が進められてたからね。加工にはそこまで手間取ることはなかったわ」
そう、この新型機のフレームには『黄金郷真球宮』で倒した竜種の骨が使われている!
あの個体は『
この特徴はヤタガラスの残した黒い翼グラビティウイングと酷似している。
なのでこれをフレームに使えれば、壊れにくい上に機体重量を気にする必要がない夢のDMDが完成する!
まあ、そもそも新型機にはグラビティウイングを素材として作られた新型装甲『ブラックロウ・アーマー』が採用されていたから、機体重量を無視して重装甲と機動力を両立するというコンセプトは元からだったりする。
竜の骨を使用した『ドレーク・フレーム』はそのコンセプトをより強固にしてくれているんだ。
もっと早くに骨が手に入っていれば黒い翼を装甲にせずにそのまま残すことも出来ただろうけど……こればっかりは仕方ない。
機体に対して異質な存在感を放つカラスの翼が好きだったけど、どうしても背中との接続部分が脆いという弱点が残ってしまう。
翼が持つ頑丈さと重力制御能力を生かすには装甲として全身にまとうのが最適だった。
ということで黒い翼よ、さらば……!
機体に走る黒いラインが翼の力を受け継いだ証だ。
受け継いだ力といえば装甲だけでもう1つある。
装甲表面の独特な光沢は新しい対Dエナジーコーティングとなっている。
これは蟻の巣で遭遇したチョウ型の人型昆虫の装甲を解析して生み出された技術だ。
今までの対DエナジーコーティングはDエナジーによるダメージを軽減する程度の性能だったけど、新しいコーティングはDエナジーを弾いてしまう。
もちろん何発も受ければコーティングがはがれてしまうのは一緒だけど、その耐久性は圧倒的に上がっている。
物理的に硬い装甲にコーティングが合わされば大抵の攻撃は通用しない。
育美さん
そんな言葉を簡単に信じてしまいそうな雰囲気がこのDMDにはある!
とはいえ、慢心してはいけない。
この機体に期待されているのは殴り勝てるような雑魚の相手をすることではない。
人類の脅威……覚醒機械体や竜種を狩ることだ。
機体を守る鎧の次は敵を断つ武器を確認しないとね!
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