-18- 破損機体回収依頼
「さて、現在の状況を説明するわね」
波乱の昼食を食べ終えた私と育美さんは、操縦用のカプセルがある個室に来ていた。
部屋の壁にはダンジョンのマップと出現モンスター、そして問題の破損DMDの位置が表示されている。
「今回探査するのはレベル10ダンジョン『
「地面が砂……地底湖……。アイオロス・ゼロは砂とか水とか大丈夫なんですか?」
「防塵と防水の処理はしてあるから壊れたりはしないわ。ただ、不安定な砂の足場と、水の抵抗がある水中は、接近戦を得意とするアイオロス・ゼロにとって有利な環境とは言えないのよね。砂の方は慣れればそれなりに動けると思うけど、水中戦に関しては出来る限り避けた方がいいわ」
「でも、このダンジョンって地底湖が多いですよね……。問題のDMDの近くにもあるみたいですし、原因の調査となると水の中を調べないわけにはいかない気がします」
「うん、もっともな意見ね。とはいえ、やはりアイオロス・ゼロでこの地底湖のすべてを調べるのは無理がある……。そこでこの武装の出番よ!」
壁に新たな画像が表示される。
そこには金色の長い棒が映っていた。
「サンダーフェンス……その発生器よ。これを何本か刺せば、その棒と棒の間に電気の柵を発生させることが出来るの。かなり高性能でお高い品物だけど、流石はお嬢様。蒔苗ちゃんに持たせるために用意してくれたわ」
それはありがたいけど、プレッシャーも増すなぁ!
失敗した時、なんて言われるかな……。
いや、最初から失敗した時のことなんて考えない!
というか、失敗なんてしない……はず!
「まず蒔苗ちゃんには普通に壊れたDMDがあるフロアに向かってもらう。そのフロアは一見だだっ広い空間が広がっているように見えるけど、奥へ進むほど少しずつ狭くなって、一番狭いところでは燐光風穴の通路と変わらない狭さになっているわ。だから、そこを塞ぐようにこのサンダーフェンス発生装置をぶっ刺して、モンスターが奥から出てこれない状態にしてほしいの」
「なるほど、奥からどんどんモンスターがやって来たら調査になりませんもんね」
「もちろんそれもあるけど、今回の一番の目的は蘭ちゃんのDMDを回収することよ。ぶっちゃけ、破壊の原因がわからなくても、DMDさえ無事回収出来れば彼女は満足すると思うの。彼女のDMDに対する思いは本物だからね」
確かにDMDが戻ってきたら喜びですべてを忘れそうな勢いがある。
ん? その場合、私への報酬も忘れられるんじゃ……。
いや、流石にそれはない……よね?
「DMDが破壊された原因が判明して、それを解決出来れば最高だけど、もし原因がわからなかった場合、とりあえずDMDだけは回収出来るように準備をしておく必要がある。サンダーフェンスで奥から追加のモンスターが来ることを防いだ状態で、問題のフロアをアイオロス・ゼロが調査する。現場のそばにある地底湖は深いところでも1メートル前後だし、広さもさほどないから、ここ1つだけなら十分に調べることが出来ると思うわ」
水深1メートル前後なら武器は水に浸からないし、水の抵抗を受けずにぶんぶん振り回せる。
水上の敵も、水中の敵も、
まあ、
「そして調査後、なにもわからなかったにしても、アイオロス・ゼロに異常が起こらなかった場合は安全と判断し、そのまま回収班をダンジョンに突入させる……って流れね」
「奥からモンスターが来ない状態で、そのフロアにも異常がないとなれば、安全と言わざるを得ませんもんね。入口からフロアへ向かう通路は私が通って行くから、当然モンスターも倒してあるし……」
「完璧な作戦かと聞かれればそうではないけど、少ない情報と戦力で考えたにしてはマシなものになっていると思うわ。映像と音声があればこっちでも細かく解析したり出来るんだけど、被害を受けたDMDが1機も帰ってきていない状態では、どうしてもね……。蘭ちゃんやお付きのDMD操者たちも証言も、こう……フィーリングというか、擬音が多くてどうにも……」
育美さんが苦笑いを浮かべる。
流石の育美さんもお嬢様相手にはたじたじといったところか。
「大丈夫です! 私が成功させてみせます、この作戦!」
「ありがとう蒔苗ちゃん。なんだか、すでに貫禄が出てる気がするわ。この作戦が成功すれば、苺先輩も救われると思うから頑張って!」
「はい! それで武器はどうしましょう? 不測の事態に対応することを考えると、苦手でも射撃武器を持った方がいいですか?」
「うーん……いや、いつも通りの武器構成でいいと思う。
「作ってもらったばかりの武器が活躍できるダンジョンなんて、ちょっと運命感じちゃいます」
「じゃあ、そろそろ会いに行こうか……。その運命のダンジョンに!」
「はい! 萌葱蒔苗、出撃準備に入ります!」
傷ついたままずっと助けを待っているDMDたちと、苺先輩を救うんだ!
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