二十人分のカレー
私の中では、カレーを食べ終わった後は、砂糖をガッツリ入れたチャイと決まっている。
「あ~、生き返る~」
チャイはこの世界で作ってもおいしかった。
「なんか、おっさんみたいだな!」
「うるさい!」
「いや、本当に……。お前見てると、俺より年上なんじゃないかとよく思うよ」
ドキっ!
(ギルバートのヤツ、妙に感がいいわね、おっさんは余計だけど……)
「私も……グレイス様が年上の方のように感じることがよくあります」
確かに、今の私は女子高生の皮をかぶったアラサー。今後はもっと女子高生らしく振る舞う必要がありそうだ……。
「なあ、辛くないのって作れるか?」
とギルバートが話題を振ってきた。
「辛くないカレー? 出来るけど……もしかして今日のカレー、辛かった?」
「いや、そうじゃない。辛くないカレーを作ってもらいたいんだ、二十人分」
「に、二十人分……! げっ、ゲホっ」
私は、ギルバートの申し出に驚き、飲んでいたチャイを喉に詰まらせてしまい、派手にむせた。
「大丈夫ですか、グレイス様」
とエマさんは私の背中をさすってくれている。
「やっぱ無理か……」
「二十人分のカレーなんて、今まで作ったことないからわかんないわよ」
「そっか……」
「それではグレイス様、私にもお手伝いさせてください!」
かくして、私はエマさんの助けを得て、二十人分のカレーを作ることになった。
ギルバートが帰った後、私はエマさんと二十人分のカレーについて、打ち合わせのようなものをしていた。
「グレイス様、今度はどのようなカレーを作られるのですか?」
「辛くないのって言っていたから、バターチキンカレーにでもしようかと思って」
「バターチキンカレー! 名前だけでもおいしそうですね」
「さっそく明日作ってもいい?」
と私はグレイスさんに尋ねた。
「ええ、もちろん」
「ところで――ギルバートは、二十人分のカレーで何をやろうとしているのかしら? パーティーとか?」
「それは違うと思います」
「何か心当たりでもある?」
エマさんはちょっと間をおくとこう言った。
「多分……ギルバート様は、孤児院の子どもたちに食べさせてあげようと考えていらっしゃるんだと思います」
「えっ、孤児院? 何で?」
ギルバートと孤児院の子どもたちという組み合わせが、とても意外だった。
「ギルバート様は以前から、身寄りのない子どもたちの面倒を見ていらっしゃるんですよ」
そして、エマさんはこう付け加えた。
「ギルバート様はとてもお優しい方です」
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