もしかして……エマさん?
「あの……ギルバート様、よろしければご一緒に夕食でも……」
私を送り届けるためにやってきたギルバートに、エマさんが声をかけた。
「え、いいの?」
とギルバートが私の方を向いて尋ねる。
「エマさんがそう言っているんだから、私は別に構わないけど」
「じゃ、お言葉に甘えるか!」
「では、先に戻って準備してきますね! お二人はゆっくり来てください」
心なしかエマさんの声は弾んでいた。
そして、今晩の食事も心なしかいつもよりも手が込んでいるような気が……。
でも、まあ、エマさんが嬉しそうにしているから、ま、いっか……。
「あの、お二人に食べていただきたいものがあるんです」
そう言ってエマさんが持ってきたのは、お菓子だった。
「わあ、プリンとクッキー? おいしそう、大好き!」
「ギルバート様は甘いものはお嫌いですか?」
とエマさん心配そうにしている。
「エマさんが作った物なんだから、間違いないって」
と私も援護射撃をする。
だが、そんな心配は無用だったようだ。ギルバートは次から次へとクッキーを口に放り込む。
「ちょっと! 私の分も残しておいてよ!」
私はかなり本気で怒っている。
「グレイス様、また作りますので……」
「そう? でもこのクッキーとプリンてもしかして……」
「はい! この前グレイス様に教えていただいたチャイを使ってみたんですが……どうでしょうか?」
「うん、いいと思う! あんたもそう思うでしょ……ってそれだけ食べたんだから、聞くまでもないわね」
私は一人で納得したように言う。
「ああ、うまかった。いいな、お前。毎日こんなうまい飯食えて」
「でしたら!」
エマさんは勢い余って、大きな声を出してしまったようで、「あ」と小さく叫ぶと片手で口を塞いだ。そして、
「あの、ギルバート様……私の作ったものでよろしければ、いつでも食べに来てください……」
と最後は消え入りそうな声で言った。
「じゃあ、毎日来ちゃおっかな♡」
「調子乗りすぎ!」
私はギルバートにツッコミを入れる。しかし、エマさんは私に乗ってくれるどころか……。
「いえ……私は毎日でも全然……」
(え! そう来た? エマさん、もしかしてギルバートのこと……。というか、エマさんてあーゆーのが好みだったのね。もっと知的で大人しい感じの人が好きなのかと思ってた。人の好みって本当にわかんないわぁ……)
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