第4話 登録試験~勝ち取れ合格~

 演習場に着くと一人の男性が立っており、声をかけてきた。


「お前たち二人が冒険者登録希望の者だな。俺は試験官のアルトだ。一応Aランク冒険者だ。よろしくな。」


「マリンですわ。お願いしますわ。」


「アリスです。お願いします。」


「二人とも魔法が使えるとのことだから魔法の試験からにするかな。このラインからあの五つ的に魔法を撃って当ててくれ。撃っていいのは十発までだ。どっちからやる。」


 お互い挨拶をし、まずは魔法の試験からになった。

 合格ラインはわかりませんが全部当てれば合格できるでしょう。


「私からお願いします。」


「マリンからか。じゃあ始めてくれ。」


「ファイアアロー、ウォーターアロー、アースアロー、サンダーアロー、ダークアロー」


 見せびらかすわけではないですが、折角なので火、水、土、雷、闇の五属性のアロー系魔法を撃ちました。

 五発で五つ当てたので合格できたでしょう。威力を抑えましたが若干的が壊れてしまいましたね。

 もう少し抑えてもよかったかもですが、全力でとは言われてませんが威力も採点されている可能性もあるのでよしとしましょう。


「よし。次はアリス。やってくれ。」


「はい。」


「ウィンドアロー、ウォーターアロー、サンダーアロー、ホーリーアロー、ホーリーアロー」


 アリスも自分の持っている属性のアロー系魔法を五発でしたね。風属性に水属性に雷属性にそして聖属性二発ですか。はじめは私と同様に抑えてましたが最後の一発は魔力込めすぎて的が跡形もないですね。


「すみません。的を破壊してしまいました。」


「気にしなくていいぞ。試験用だから貴重な物でもないし替えはたくさんあるからな。」


 アリスは申し訳なさそうにしていますが、考えてみればそうですよね。

 冒険者はほとんど平民ばかりで、貴族は少ないと言っても誰しもが魔力は持っているわけで、平民でも魔力が多く高威力の魔法が使える者が会ったことはないですがいるでしょうから試験に使う消耗品に貴重な物を使うわけないでしょうからね。


「次は剣術、格闘の試験だがアリスはどうする。魔法職だろうからやらなくても大丈夫だが」


「短剣と強化魔法を使った格闘はできるので、魔法メインですが一応受けます。」


「そうか。わかった。今度もマリンからやるか。」


「そうですね。」


 そうして、魔法試験同様、最初に私が次にアリスが試験官のアルトさんとの模擬戦をやった。

 結果を言うと私もアルトさんも強化魔法を使って戦い私は呆気なくアルトさんに勝ってしまった。

 アリスは善戦したもののアルトさんの勝ちとなった。

 アリスは私と違いどっちもメインに使うというより、魔法メインで短剣と格闘はサブですからね。


「マリンもアリスも凄いな。マリンに関しては何も言えない呆気なく負けたしな。アリスも魔法メインなのに格闘があこまで出来るとは、Cランクのやつなら余裕をもって勝てるな。Bランクの冒険者でもほとんど勝てるんじゃないかな。

という事で二人とも合格だ。特別処置でBランクにしてもいいが、ギルマスと相談して……」


 アルトさんから合否と説明を聞いていると誰かがやってきた。


「二人ともランが受付で適性属性を叫んで、その場にいた皆に知れわたってしまい済まんかったな。

それからアルト、試験官ご苦労じゃったな。そして二人ともお疲れさん。アルトに善戦と呆気なく余裕勝ち凄いぞ二人とも。期待の新人だな。そしてアルトは登録試験の模擬戦とはいえAランクなのに登録しに来たと者に呆気なく負けるとは情けないな。鍛練がたりんな。俺が鍛え直してやる。」


「ギルマス、そりゃないですよ。俺も負けるとは思ってませんでしたが、二人が強すぎるだけですよ。勘弁してくださいよ。」


 見覚えのある年齢にそぐわない筋肉ムキムキのマッチョなこのお爺さんがやってきた。

 王都の冒険者ギルド本部のギルマスともなれば王城に呼ばれる事もありますからね。

 あの受付嬢はランさんというのか。

 迷惑に思いましたが、活動を続けていればいずれバレるでしょうし、本人からも謝ってもらったのでもう気にしてませんよ。


「謝罪を受け入れますわ。本人からも謝罪してもらいましたし、冒険者として活動を続けていけばいずれバレることですから気にしていませんよ。」


「私もです。」


 私とアリスとギルマスの話し合いが終わるとアルトさんがギルマスに話し始めた。


「でぇ。ギルマス、この二人なのですが、特別処置で強いからBランクからとしたいところですが、新人で経験もないでしょうからCランクスタートってところでどうでしょうか。

試験を最初からモニターで見ていたのでしょう。どうせ。」


 観戦は出来ないけどギルマスは、モニターから見ていたのか。

 Fランクから地道にランクアップしていった方がいいのだろうが経験も積めるし、でも実力のある者をFランクから地道にやらせるには勿体ないという意味で特別処置があるのだろう。

 色々と依頼の幅も広がるし、私たちとしてもありがたいことだ。


「そうだな。Cランクで登録して、魔物も対人戦闘の実戦の経験もないじゃろうから二人ともアルトのパーティに一時的に参加し、BかCランクの魔物の討伐の依頼一回、盗賊討伐の依頼一回受けて達成しろ。そうしたら文句無しでBランクにしてやる。それでいいか二人とも。」


「「はい。」」


「俺には聞かないんですか。うちのパーティに一時的に参加して、依頼受けるんですよね。」


「お前より強い者とお前に善戦した二人が一時的に加わるだ。ギルドとしても即戦力の高ランク冒険者は欲しいからな。お前に聞くまでもない。拒否権はない。お前たちのパーティも実力を上げてきているからこの二つの依頼を達成したらアルト、サイ、ソフィアの三人をSランクにして、Sランクパーティに上げてやる。それで文句ないだろう。」


「OKです。文句ありません。BかCランクの魔物の討伐か。二人の実力から言ってBランクの魔物でも大丈夫そうだからキングタイガーウルフの討伐でいいですかね。依頼出てましたったけ。」


「あったと思うぞ。」


 私たちが話に参加しなくてもサクサクと決まっていくな。


「盗賊討伐は、この間Bランクパーティ三組を返り討ちにしたレッドハット盗賊団の討伐でいいじゃろう。」


「わかりました。それじゃあ俺は、パーティメンバーに話してきます。二人は受付で登録して来るといい。登録終わったらギルド内の酒場にいるから来てくれ。」


「「わかりました。」」


 私たちの返事を聞くとアルトさんは、パーティメンバーのもとに向かうために走っていった。

 ギルマスは、私たちがいきなりCランクになったとわかると周りにいる冒険者と一悶着ありそうだからと一緒に着いて来てくれることになった。


「マリンは王女じゃからな。何かあるとマルクの奴がうるさいからな。」


 とのことである。ちなみにマルクとは父である国王陛下のことである。


「アリスもマリンと一緒にいるということは貴族令嬢じゃろう。」


「はい。ロイナール男爵家の娘です。」


「ダンの娘か。何年も会ってないがダンとアンナは元気にしているか。」


「お父様のお知り合いだったのですね。お父様もお母様も元気です。」


「ああ、ロイナール領の冒険者ギルドのギルマスをしていた時にはロイナール家の屋敷によく行っていたからな。

ダンとは年の離れた飲み友達って感じじゃな。

屋敷に行くのは夜遅い時間じゃったからな。アリスの兄二人、ダニエルとアルスには会ったことがあるがアリスとは初めましてじゃな。

ダニエルとアルスに男爵領を任せダンとアンナが王都の屋敷に住むようになり、数年後にワシも王都のギルマスになって近くにいたのじゃが忙しくて屋敷にはまだ行けてないんじゃよ。

娘もいるとは言っていたが、マインと仲が良く一緒に冒険者になりに来るとはのう。驚きじゃ。

ダンに時間に余裕が出来たから近いうちにヤックが飲みに行くと言っていたと伝えてくれるかな。」


「わかりました。」


 ギルマスと話しながら歩いていると受付に着いた。

 ギルマスと一緒だからか冒険者に絡まれることもなかった。


「マリンさん、アリスさん合格おめでとうございます。こちらがギルドカードになります。

まずはカードに少し魔力を込めて魔力のご登録をお願いします。」


「「わかりました。」」


 受付嬢のランさんは何でギルマスが一緒にいるのか疑問に思っているようですね。

 ギルド内にいるこちらの様子を伺っている冒険者も同様のようです。

 周りを気にしないようにしながら二人とも魔力を込めて魔力の登録をした。

 魔力を登録することで偽造などをして本人以外が使ったりと悪用防止になる。


「はい。これで登録完了です。ギルドカードを紛失された場合は、再発行できますが有料となりますので、無くされないように気を付けてくださいね。」


「「はい。」」


 じゃあ、登録も終わったし、アルトさんのところに行こうかな。

 どこにいるのか周りを見たら隣接されている酒場で手を振るアルトさんの姿が見えたのて、受付のランさんとトラブル防止のために付き添ってくれたギルマスにお礼を言って、アルトさんたちのところに向かった。

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