気分屋さんの雨
ぱたぱたと雨が降る
目を覚ましたばかりの命に
力を与えるように
一つ一つに思いを込めて
絹のように優しく
岩のように力強く
新しい命を抱きしめ
心から喜んでいた
誰かが水たまりに飛びこむ
ばちゃん
キラキラした世界が
ゆらゆらと揺れた
雨どいから雫が落ちて
下で待っていたバケツに当たる
ぼん
雨のソロは始まったばかり
ばしゃばしゃと雨が降る
この世のすべてを代表して
これでもかというほど
怒り狂っている
窓から雨を眺めていると
自分の怒りがなんだか
月を見上げるすっぽんくらい
ちっぽけに思えてくる
いつの間にか部屋の中にいた
モーツァルトとヴェルディは
口をそろえて
怒りの日だなと言った
激しい雨に耳を傾け
そっと目を瞑る
こんな日は特に
昼寝にもってこいだ
しとしとと雨が降る
遠い誰かを思うときの
静かな涙のように
いつの間にか降っていた
傘を差して立ち止まる
悲しいとも
寂しいとも言えない感情が
心の中をいっぱいにした
空からやってきた冷たい雨は
頭を冷やし
心を冷まし
靴を濡らした
一歩、また一歩と歩く
去りたい気持ちと
浸っていたい気持ちが
せめぎ合っていた
ぽつぽつと雨が降る
暗い夜は終わり
もうすぐ朝が来る
空から光が差していた
傘を閉じる
彼の出番は終わった
家に帰るまでの道を
二人で並んで歩いていく
空にうっすらと虹が架かる
きっとあれは近道だぞ
傘がそう言ってくるが
私はメリーポピンズじゃない
ゆっくりと歩いていく
また雨は降るだろう
だからより一層
今の世界が輝いて見える
ぱたぱた
ばしゃばしゃ
しとしと
ぽつぽつ
気分屋さんの雨を待っていた
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