第4話 北条一家と食事
疲れた。
何に疲れたかって、驚き疲れたのさ。克人さんがダイニングではなく食堂(ダイニングの日本語訳は食堂なのだが、ダイニングは一般家庭、食堂は学校にあるような広さがある物を指しています)と呼んだことで薄々察してはいたが、こんなに広いとは思わなかった。
どれくらい広いかって、そうまるでハ○ー・ポ○ターに出てくる大食堂くらいの広く大きな長机が三つ並んでいる。とても一家族、4、5人だけで使うような広さではない。
まぁ北条家は四大財閥の一つだ。外から人を招いて食事会をするときに使うんだろう。
そんなことを考えながら「こちらに」とメイドさんが椅子を引いてくれた席に座った。
今座っているのは中央の長机にある席で、克人さんが長机の正面に座り、北条さんから向かって右側の側面の克人さんに一番近い席に翔子さんが、克人さんから向かって左側の側面に克人さんに一番近い席を空けて俺が座っている。
まぁ簡単に言うと俺の右隣が不自然に開いているわけだが誰が来るのかは予想できるな。
そのとき食堂の扉が開く音がし、扉の方をみると先ほど二階からこっちを見ていた長い銀髪の女の子、北条陽葵だった。
北条さんは俺たちが座っている方に向かってきて、俺を先ほどと同じように興味なさそうに一瞥した後、俺の隣の席に座った。
そして北条さんが座ったことを確認してから克人さんが近くに控えていた梓さんに手を上げて合図を出し、梓さんは奥の扉から出て行った。
多分料理を持って来させる合図なんだろう。ちょうど時間もあるし北条さんに話しかけてみるか。
そう思って北条さんの方を向き話しかけた。
「えっと、如月修といいます。これからしばらくの間ここでお世話になります。よろしくね」
同年代の女友達もおらず、中学時代も少数の男としか絡んで来なかったため、同年代、それも絶世の美少女を前にして簡単な挨拶しかできなかった。
北条さんはというと、先に出されたジュースも飲んでこちらに何の反応をしてくれなかった。
克人さんと翔子さんの方を見ると、申し訳なさそうにこちらを見ていた。
どうやら北条さんの傷は思ったよりも深いようだ。長い戦いになりそうだぜ。
と、そんなことを考えていると奥の扉から梓さんと数人のメイドさんが料理をのせたワゴン(サービスワゴンというらしい)を押して入ってきた。
そして俺たちの前に料理の配膳をしてメイドさん達は数人は俺たちのすぐ後ろに控えた。多分食事中のお世話をしてくれるんだろう。そして残りのメイドさん達は壁のそばに控えた。
「さて、今日はお客様を迎えた。これからしばらくの間よろしく。今日はとりあえずフランス料理を用意させたんだ。それではいただこう。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
克人さんの音頭に合わせて俺たちは乾杯をした。隣をチラッと見えると、北条さんも声と動作は小さいけど、一緒に乾杯をしていた。
さて北条さんのことは後で考えるとして、お腹も空いたし食べるとするか。
そう思いながらいざ食べようとすると動きが止まってしまった。
困った……何に困ったかって。出された料理は北条さんの言う通り高級レストランで食べるフレンチ(もちろんテレビで見たことがあるだけ)なのだが、問題はフォークとナイフが多過ぎて何を使えばいいか分からん……
お皿の右側にはナイフが3つとスプーンが1つ、左側にはフォークが3つ置いてあり、さらにお皿の奥にはナプキンが置いてあった。
隣の北条さんを見るとナプキンを膝の上に広げ、外側のナイフとフォークをとって出された料理を食べていたので、俺も見様見真似で真似をした。
俺のぎこちない姿を見ていた克人さんが苦笑しながら言ってきた。
「修君、うちはあまりマナーについては厳しくないから、気にせず食べていいよ。まぁ一つ言うならできているけど、ナイフとフォークは外側からね。」
「あ、はい。ありがとうございます」
マナーを気にせず食べていいと言ってくれたが最低限のマナーなどは気をつけておいしく料理を頂いた。
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