ご多忙お嬢様

 マクラーレン(スコットランド人)が、音もなく紅茶のおかわりを運んできた。

「あら、ありがとう」

 お嬢様は永い時をかけて攻略を続けている愛用のPSP版海腹川背portable(2面)をテーブルに置くと、静かにミルクと紅茶が撹拌されるのを眺めている。

「お嬢様、殺しの依頼でございます」

「あら、素敵ね」

 ミルクティーを飲みながらお嬢様は微笑んだ。


「今回の標的は財閥の御曹司で数々の犯罪に手を染めながら、金とコネで起訴を免れてきた男で…」

「マク、今日は午後から女学校の志保様とのお約束を思い出しましたの」

 お嬢様は優雅な手付きで、マクラーレンに紙を渡す。

「こちらの無記名小切手で別の殺し屋に再依頼をしておきなさい」

 時にお嬢様殺し屋は、お友達を優先する。

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