第5話 食事と彼女
「どうしたの?そんな幽霊でにも会ったような顔して。」
誰もいないはずの家で、全く知らない女性が居たら誰でも驚くだろ。
って、言いたかったけど俺は言えなかった。それほど動揺していたってことだろう。
そのかわり俺の口から出たのは
「いただきます。」だった。
どうしてこの言葉がふっと口をつくように出てきたのかは分からない。ただ、この時の俺は3大欲求である食欲に負けたのだろう。
自分以外の手料理を食べたのはいつぶりだろうか。懐かしさを感じ、喜びと哀しみを同時に感じ、複雑な気分になっていた。
「ねぇねぇ!美味しい?美味しいでしょ!私料理のこといっぱい勉強したんだ!うん、うんやっぱり勉強した甲斐があったね。」
「俺はまだ美味しいとは言っていない。」
「えっ、じゃあ美味しくないってこと?」
「いや、そういう意味で言ったんじゃなくて…すごく美味しい。けど、君はいったい誰なんだ?」
「そうね、たしかに同じクラスだからって私のこと覚えてないよね…」
「えっ!同じクラスだったの!?ごめん…覚えてないや。」
俺は同じクラスだということに違和感を感じた。金髪の女の子ってだけで印象に残りそうだけど、全く記憶になかったなんて…
「そういえば名前、なんていうの?」
「私の名前?そうね…」
一体なんなんだ、この沈黙は。と、とりあえず俺の名前を言うしかない!
「あ、えっと、俺の名前は立花佑斗。名前は好きなように呼んでいいよ。」
「じゃあ、佑斗って呼ぶね。それで、私の名前だよね、私はイレーネ!」
「いい名前だね。よろしく、イレーネ。」
「あ、あのさ佑斗、私ここに泊まってもいいかな?」
「え?えぇ!!」
「ダメだよね…無理言ってごめんね…」
泊めてあげてもいいのか?いやいや、いくら同じクラスだからって俺的には初対面だし…
そう思いながらじっくりと彼女のことを見てしまった。
でも、悲しんでる彼女を見ると何故だか守りたくなる。これが俗に言う小動物系女子ってやつなのか!
「ダメだとは言ってない。泊まってもいいよ。けど、何日ぐらいかは聞いとかないと。」
「えっと、気が済むまで居てもいいかな?」
「そっかぁ、気が済むまで…ええっ!」
「あっはは。じゃあこれからよろしくお願いします。」
「よ、よろしくお願いします。」
ああ、何も考えずに口約束するのはもうやめておこう。どんな目に合うか分からないしな。
ま、一つだけ良かった点があるとしたらイレーネとは仲良くなれそうなことだ。
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