第14話


 病室を訪れると、わたしはいつものように話しかけた。

 外では雪が深々と降り積もって、余計に病室内が明るいように見えた。

「恵美理ちゃん、今日はミカンを持ってきたのよ、香りくらい楽しめると思って」

 しかしベッドに寝かせられた彼女はみじんも返事をしない。

「やっと、ロバートさんの骨が見つかったんですって。海だから普通見つからないのに運がいいわ」

 苦々しく、焼けただれた彼女の顔を見ていた。

「伯生さんが身を挺してあなたを守ってくれたのよ。傷があっても、命さえあればいいわ」

 わたしは「一人になってしまった。でも恵美理ちゃんがいる」とため息をついた。

「焼け跡に花束とか、お菓子とか置いてくれる人がいるのよ」

 話し続けた。ただ、それだけだった。

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白猪堵荘(しらいどそう)にあめがふる日 片葉 彩愛沙 @kataha_nerume

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