第13話

 眠れなかった。呼吸が詰まる気がして、起きた時には、なぜか涙が流れていた。

「……うぅうう……わけわかんない」

 私は起き上がって、目元を袖でゴシゴシしながら階段を下りた。

 月がきれいな深夜だった。

 足元はすごく冷えていて、つま先がギュッとなる。


 空気を吸いたくなって、縁側へ向かった。

 ぺたぺた、と歩くと、向こうに伯生さんの影が見えた。


 目が合った。


 月明かりが明るいから、彼の周りが黒く見える。

 殺される。

 急にそう直感した。

 月明かりの縁側、逃げまどって捕まって倒れる。

 取っ組み合っていると、服がめくれあがってマスクが脱げた。自分の腕が見えた。骨が見えていた、肉が焦げたようになっていた。縁側の窓ガラスが鏡のようになっていて、自分の顔を見た。焼けただれていた。

 伯生さんはジッと私を見ていた。苦そうな顔をしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る