第12話


 伯生さんが私を避けている。

 目が合うと逸らされるし、私がいない場所に逃げていく。

 逃げているのかはわからない、本当にそこに用があるのかもしれないけど。


 暴力は振るってこない。


 ありがたいことだけど、今度は避けられるというのは、どういうことだろう?


 朝起きてリビングに下りると、伯生さんがいたけど、私を見るとどこかに行ってしまった。

 テーブルにはまだ3分経ってないカップ麺がある。


 ちょっとしても戻ってこない。

 この麺伸びそうだな。


 同じ味はまだあったから、私が食べてしまおう。


 と、箸を持ってふたを開けた。

 麺を絡みとって、フーフーして、ズズっと啜る。


 すると、ドタドタと足音がした。

「がっ?!」

 振り向く前に、頭をぶっ叩かれて、私は吐き出した。

 カップも倒れて、スープと湯気が広がる。

「な、なに……」

 誰かはわかっていたけど、伯生さんだった。

 私は文句の一つでも言いたかったけど、急にすごく悲しい気持ちのほうが大きくなって、涙が滲んだ。

 すぐにあふれて、彼も何も見えなくなる。

 戸惑うような息遣いが聞こえたけど、私は何もかも放置して、二階に駆け込んだ。

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