火の無い所に煙は立たない。#4
仮面の男とシェアリーは場所を変えながら戦闘を続けていた。
それは人が集まり過ぎない事や行政の介入を恐れての物であったが、仮面の男にとってそれが戦いやすい状況であったからでもある。
三人の執事と一つの場所に留まって戦うよりも、動きながら有利を作り戦っていった方が効率がいい。それが仮面の男の考えであり、性格であった。
町中を駆け回るようにして戦う彼らであったが、しかし、一般人の怪我人は仮面の男が最初に撃った一人だけである。それがプロであり、最強と呼ばれる所以の一つでもあった。
彼らは殺す事に長けていると同時に、殺さない事にも長けている。
仮面の男や執事飼いほどの殺し屋となれば相手がどう避け、どう反撃してくるかを予測し、その結果一般人に被害が及ぶ事が無いのかも計算し戦う事が出来る。
彼らは一般人を殺し自らの質を下げる事を恐れているのだ。
無駄な殺しはせず、依頼に忠実な殺しを行う。それが出来るからこそ彼らは一流であり、信用に値する人物と言われるのだ。
「この辺りでいいか」
数分の後、仮面の男は足を止める。
彼らが戦場にと選んだ場所は新宿駅近くの日本庭園であった。
「もう鬼ごっこはおしまいですか?」
「お前の人生もおしまいにしてやるよ」
言いながら仮面の男はルーキフェルを取り出す。
そうして静かに、彼らの戦いが始まったのであった。
「ワトスン!」
ホームズはワトスンに追いつき絶句する。
そこには血を流し死にかけとなったワトスンが倒れていたのだ。その隣では壁にもたれ掛かるようにして西条最上も座っていたが、彼もまた腹部から滴るほど血を流していた。
「何があった西条」
西条最上はいつもの茶化すような笑みを浮かべながらホームズを見た。
「ホームズ、お前の勘が当たったぞ。不確定要素の化物が現れやがった」
言い残し、西条最上は気を失う。
「おい、せめて名前を言ってから気絶しろ。西条!」
自らも危機的状況でもあるにも関わらず寸前まで人をあざ笑うかのような態度の西条最上を見ながらホームズは状況の把握に努めた。
ワトスンも西条最上も、ココやミルダに及ばないにしろそう簡単にやられる二人ではない。そんな二人を瀕死にまで追い込める人物は、今はココしか居ないはずであるが、ココは先程までホームズと共におり、またココはこのような殺しはしない。
では誰が。
考えるホームズであったが、しかし、彼の情報網を持ってしても犯人が思い浮かばなかった。
「一体誰が……」
そしてホームズは不安を感じながらワトスンを抱きかかえ、その場を後にしたのであった。
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