甘いモノには逆らえません


「おはよう大地くん。

 今日はいつもと違って朝から元気そうね」


 俺は今日ライブの日に変わってもらったエリーの代打として、優里さんと共に朝からバイトに勤しむ事になっていた。朝は起きるのが苦手だから本当は嫌なんだけどね……


「え?そんな顔してた?」


「えぇ、とっても。

 ……あの後、彼女と何かあったの?」


「おっ、聞いてくれる?

 実はね……あだ名で呼ぶ事を許された!」


「……はい?」


 あら?なんか優里さんの反応が思ってたのと違う?顔だけで「え?それだけ?」を表現するチャレンジをしているような感じだ。


「それだけなの?」


 どうやら、その通りだったようだ。


「そ、それだけとは?」


「あまりに良い顔をしているから、恋人にでもなったくらいの事があったのかと思ったのよ」


「…………こ、恋人ぉっ!?」


「……大学生なんだから、そんな反応しないでちょうだいよ」


 な、な、何を言ってるでやんすかこの美人は!?俺と李梨沙が恋人ぉ!?そ、そ、そんな事があるわけないじゃないですか優里さん!


 てか、すごい反応しちまったからめちゃくちゃ引いてるよ優里さんが。うわ、これDo貞と思われちゃうじゃないかぁ……いやその通りか。辛。


「うぅ。優里さんがいじめる……」


「……ふふふ。ごめんごめん」


「いや、めちゃくちゃ笑うじゃん優里さん」


「だって、大地くんの反応がエリーと話している時みたいなんだもの。少し楽しくなるのもしょうがないじゃない」


「え……優里さん、エリーに憧れてたの……」


「そういうことじゃないわよ」


「ちがうの?」


「そうじゃなくて、いつもエリーと話してる時の貴方が、その、か、可愛いから……」


 ん?貴方が……なんだって?

 最後らへんの声が小さくて聞こえなかった。


「ん?俺がどうしたの?」


「はぁ……何もないわ。気にしないで」


「ほれ、そこのカップルー。いちゃついてないでちゃんと働け〜」


「カ、カ、カップルですって!?」


「「……え?」」


 俺は目を見開いて動揺をしていた。


 店長がカップルって茶化してきた事にって?それ自体は別にいつもと変わらない光景なのでスルーで大丈夫だ。あの人のノリはいつも軽いからな。


 問題は優里さんがそれに動揺したということだ。


 別に普通のことじゃね?逆にこんなに可愛い子が動揺する姿とか、かわいーからいいじゃんか!卍


 と思う人が大半なのだろうが、いつも店長のいい加減な野次や茶化しなどや、色々なトラブルにも冷静に対処する優里さんだからこそ、目を見開く程驚いてしまったのだ。


 俺はこんなにもあたふたして、余裕のない優里さんを見た事がない。


 ……よく見たら店長もめちゃくちゃ驚いてるし。ま、店長はどうでもいいか ^_^


 とにかく異常事態だ。

 どうしたのだろうか、結構心配だな……


「ゆ、優里さん?どうしたの?疲れたならかわろうか?」


「そうだぞ優里ちゃん。今はそんなに忙しくもないから休憩にはいってもいいんだぞ?仕事は全部大地のやつに任せてさ」


「いやいや、店長に任せてさ」


「いやいや」


「いやいや〜」


「いや、二人してどうしたのよ。怖いわ」


 店長と二人で心配していたら、いつもの優里さんのような冷静な反応をされた。


 ……いや、冷静というか若干引いてんなこりゃ。まぁ、いつもの優里さんに戻ったみたいでよかったよ。


「いや、優里さんが動揺してるところなんてなかなかないからさ……しかも店長が言ったことに対して」


「そうそう、俺も右に同じく……ってなんで名指しなんだよ!」


「もう……心配してくれるのはありがたいけど二人とも業務に戻らないと、ほら、忙しくなって来たわよ?」


「「はーーーい」」


 いくら店長と言えども子供のように、思わず二つ返事で素直に従ってしまう。それが白瀬 優里という人の凄いところだ。


 それに何度も言うが、とてつもなく美人。前世ではきっと徳積みRTAでもしていたのだろう。



 ***


「ごちそうさまでしたー」


「「ありがとうございました!!!」」


「うーし、二人ともお疲れ。

 あとは適当に上がっていいぞ〜」


「「は(ほ)い」」


 ふぅ、疲れた疲れた。

 俺の業務時間も終わり、あとは愛するマイホームに帰るだけである。待っててね李梨沙ちゃ〜ん!



「お疲れ様、大地くん。

 このあとは予定あったりする?」


「お疲れ〜。ん?特にはないけど、どしたの?」


「そうなのね。それじゃあ、近くに美味しいクレープ屋さんが出来たのだけれど食べに行かない?一人だとちょっとアレだから……」


「え、クレープ!?

 是非ともお供させていただきます、姫!」


「ふふ、姫にも慣れてきたわね。ありがとう、それじゃあ早く着替えて行きましょう」


「了解です!」


 早く愛する我が家に帰って李梨沙に会いたいところだが、クレープとなれば話しは別だ。そうだよ、俺は甘いものが大好きなんだ!


 しかも優里さんがオススメするところだろ?美味しいに決まってんじゃん!


 それに一人だとアレと言っていたところを見ると行きづらいのだろう。その気持ち痛いほど分かる!


 まさか、優里さんみたいな美人から聞くとは思ってもいなかったから親近感がさらに湧いてくるゾ!


 ……ていうか、さっき家に帰って李梨沙と会えるとか考えてたけど、俺ってば連絡先知らなくね?てか、連絡先って知ってもいいのか?



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