混ぜたらキケンを混ぜてみよう!




「ちょっと二人とも!置いていくなんてひどいデスよー!」


 そう言いながらエリーが俺たちの元へと走ってやってきた。


 揺れておる。お胸さまがバインバインと揺れておるぞ!ほーら、周りの家族サービス中のお父さんが皆等しく前屈みになってるじゃないか!え?俺は、って?もちろんお察しの通りさ!おふぅ……



「はぁ、私はちゃんとクラゲ水槽に行くと言ったでしょう?」


「そんなこと聞こえてませんヨ!うぅ、大地も優里もワタシを除け者にして〜。二人して隠れてエッチなことでもしてたんでしょう!そうでしょう!」


「えぇ、そうよ」


「もー冗談ですヨー。そんなことしないのはわかって……えぇ!?本当にしたんデスカ!?」


「いや、嘘よ」


「ふぁ!?ウソ!?

 それも絶対ウソです!優里の大きなオッパイ揉んだんデスネ!大地!」


「あら、言わなくてもわかってるじゃない。エリーは頭がいいわねぇ」


「ふぁぁぁぁ!?!?エッチです!エッチがいます!」


 すごい周りの人から注目を浴びている……


 こんな美女二人がこの内容で騒いでいたらそりゃ目立つ。ただでさえ目立つのに尚更だな。


 優里さんはニヤニヤしながらエリーをいじってるし、エリーは顔を真っ赤にして彼女に抗議してるし。止めようとしたが、どうやら今は無理そうだ。諦めてトイレでもいこーっと。


「ん?おわっ!?」


 なんだ!?いきなり腕をぐいっと引っ張られて、どこかに連れ去られる。ん?銀髪?もしや……


「いてて……どうしたんですか、りr」


「シーーっ!うるさいわよ!もっとパニックにする気!?」


「モ、モゴモゴ……(す、すみません……)」


 俺がそういうとサングラスとマスクをした銀髪の不審者。もとい榎本 李梨沙は俺の口を抑え次の言葉を遮った。


 や、やっぱりいた!あの奥でぴょこぴょこしていた特徴的な銀髪はやはり我が推し李梨沙だったのか……うわーポニテじゃん。推し×ポニテ=尊死 ってガウスも公式出してたけど本当だったんだ!


 てか李梨沙、俺の口を抑えてるけど触れても大丈夫なのだろうか……


「と、とにかく、なんでここに?誰かと来てるんですか?」


「……一人だけど、文句ある?

 君が居づらそうにしていたから助けてあげただけよ。」


「い、いえ、ないです。それは、ありがとうございました。……にしても一人で来るなんて水族館がお好きなんですね」


「……え、えぇ、結構ね。」


「そう、なんですね」


「「……」」


 き、気まずーーーーーーい……


 いつもなら喜んで昇天すべき出来事のはずが、今俺はこの世に生を受けて初めて李梨沙にビビっている。


 てか、本当に李梨沙はなんで昨日の今日で俺に声をかけたんだ?見つけたとしてもほっといたらいいのになんでわざわざ嫌いな俺に?


 いや、なんにせよ昨日のことを謝らなければ。一度あんな可愛い李梨沙を見たらもう嫌われたくなんかないだろ!博多弁を話す推しを今一度拝みたい!!!


「あの、昨日は本当に……」


「こんなところにいたのね。

 もう、係員さんも来て大変だったんだから……」


「ダイチ!私たちを置いていくなんてひどいデス!シチューかき回しの刑デス!」


「……はぁ、エリー、それを言うなら引き回しだよ」


 謝ろうとしたら騒ぎの中心人物であった、優里とエリーが俺を見つけ近づいてきた。


 なんたるタイミングの悪さ!この場にこの顔面偏差値の3人が集まったらダメだよ!注目をいやでも集めちまうよ!ほらまた周りでチラチラパーティが始まったよ!俺の存在を持ってしても中和できないよ!……ぴえん


「もう、エリーったら……あら?そちらの方は?」


「あーえと、こちらはー……」


 ど、ど、ど、どうしよ〜!!!


 千堂大地史上最もピンチとも言っていい状況だ。こんなのまじで進○ゼミでもやったことないわ!


 正直に李梨沙です!って話すか?いやいや。何言ってんすか大地さん……さすがに李梨沙って言ったらダメだろ……こんなに変装もしてんのに、いくら友達だからってリスクが高すぎる。


 特にこの金髪巨乳美女には言っちゃダメだ。預言者じゃなくても未来を容易に予言できる。


 そんなことを悩んでいたら


「……彼の大学での友達よ、そこで見かけたから話しかけたの。私は 江本えもと 梨沙りさ。よろしくね」


 李梨沙が偽名を使いそう答えた。俺が少し戸惑っていると、彼女はこっそりと俺に目くばせしてきた。


 きっと、『私たちに交流があるのはバラしちゃダメだよ?大好き大地くん!』の目配せだな。


 なんか秘密の関係みたいで高まるね!……違うだろって?うるせーやい!夢見せろやい!(おそらく合っている)


「……そうなのね、私は白瀬 優里。よろしく」


「エリーでーす!大地の友達は私の友達です!仲良くしまショー!」


「え、えぇ、よろしく。もしよろしければ少しの間ご一緒させてはもらえないかしら?連れと逸れてしまって、今一人なのよね」


「私はいいわよ?エリーは?」


「もちのロンです!一緒にお魚見まショー!」


 ……いや、どうしてそうなるんだ。何故李梨沙は、自らバレるリスクがある場所へと飛び込んだんだ?


 しかも何回も言うけどこのメンツはやばいよ、俺と3人の絵面が完全に釣り合ってなさすぎて、まるで奴隷と美人ご主人様たちだよ……まぁ、悪かないがね。でも李梨沙のためにもやはりダメだ!


「いや、それは……」


「 大地くん はいやなの?」


 ……り、り、李梨沙が、李梨沙が俺のことを、上目遣いで 君 じゃなく 大地くん って……!


「もちろんいいよ!♡♡♡」



「……えーっと、彼の目がハートに見えるのだけれど、気のせいかしらエリー」


「……いや、大地の顔がコガネムシになってマス。おそらく優里の想像は当たりデス」


「恐ろしいほど会話が成立してないけど……」



 この ブヒブヒどMオタク野郎 、またの名を 千堂 大地 。彼の水族館デート(?)はまだ始まったばかりである……



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