異世界いって胃袋強化したい件・・・
「それじゃあ、帰るわね」
「あ、はい。今日は本当にありがとうございました。帰りには気をつけてくださいね」
「……」
「……え、えーと、なんすか?」
どうしたんだ?白瀬さんが顔をぐいっと近づけて俺をじーっと見つめてくる。
ち、近い。近すぎて彼女からフローラルのいい香りがしてくる……
なんということでしょう!白瀬さんが家にいるだけで、まるで自宅がお花畑に!
…………いや、長いな沈黙が。
「……なんで、大地くんは私だけに敬語なの?エリーにも、店長にも言葉をくずしているのに。」
「そ、それは……」
思わず口ごもってしまった。
だって白瀬さんみたいな綺麗系な美人に同い年だからって安易にタメ口をきいたら、生意気だってハイヒールの細い部分でお尻プスプス刺されそうじゃん!……いや、わるかねぇなぁ。
「優里。」
「へ?」
「優里とよんで?優里さんでも可。
白瀬とは呼ばないこと。わかったわね?」
「へ、へい……」
「ん、いい子。それじゃ今度こそ帰るわね。
もし、もしよ?いじめられてるんなら私に言ってちょうだい。味方になってあげる」
「あーそれは……いや、はい!
その時は頼りに……してるよ!」
流石に李梨沙が隣に住んでいることを勘ぐられてはならない。俺は彼女の迷惑にはなりたくはないのだ。てか、タメ口むっず!
「ふふ、その調子よ。おやすみなさい」
そういって白瀬……優里は、帰って行った。
一体なんだったんだ?てか本当に同い年か?
俺の中のバブみがおぎゃり散らかしているんだが。
でも、何故優里さんはあんなことを……ま、まさか、これが俗にいう『モテ期』というやつか!?
ラブコメの主人公しか持つことの出来ない伝説のパラメータ『モテ期』!そんな伝説上のものを俺が持つ日がくるなんてな……
この夏は、いつもと何か違う気がするぞ!
……違うと分かってても一回言って見たかったんだよ。そんな目で見るなよな!
*
さてさてさーて!話を戻しましょうぞ、皆の衆!ここからが本番だ!俺が今から行う事は単純明快!みんなも一緒にやってみよう!
ステップ1
目の前に
ステップ2
いただきますと言い、
てか、青?青ってなに!?青ってなんなのさ、李梨沙ぁ……
くおぉぉぉぉぉ…………
ス、ステップ3……
ピーンポーン
「……はい。」
俺がチャイムを鳴らすと、我が推し李梨沙がドアを少し開け、そのご尊顔を見せてくれる。ん?なんか今日も変わらず俺は睨まれてるけど、額に青筋が浮かんでいるような……
「あ、あの!今日もありがとうございました!美味しかった……です!」
「あぁ。あれですか。別に」
……おかしい。
いや、反応はいつも通りだよ?いつも通りゲームチャットにあらかじめ入ってる定型文ぽいけど、なんか、こう、今日の李梨沙からは哀愁を感じる。
ここは今後の良好な関係の為にも、意を決して理由を聞くべし!
「えーと、もしかして俺何か失礼なことでもしましたか……?もし、そうであれば、本当に……」
「彼女ですか?」
「……へ?」
「彼女ですか?」
「いや、あの、なにが」
「彼女ですか?」
ど、どうしたというんだ李梨沙!
我が愛しの推しが壊れた彼女ですか?人形になってしまった……!
ていうか、なんで彼女ですか?
あ!もしかしてさっきの白瀬さんの自宅訪問を李梨沙が見ていたのか!?となるとまずい……
李梨沙が俺に彼女がいると勘違いしていて、知らず知らずな間に彼女持ち男性に手料理をふるまっていたんだ私……っていう罪悪感を抱いている可能性がある!
おぉ、なんてことだ……今時そんなことを考える女性なんて少ないだろうに……
我が推し、いや我が天使は今日も最高だな!早いところ李梨沙を苦しみから解き放たねば!
「ちがいます!さっきの人は俺のバイト先であるカフェの同僚で、俺が元気がないのを心配してきてくれただけです!彼女ではないです!」
ピクッ
おぉ!李梨沙の方が少しピクッとうごいた!心なしか少し口元が緩んでいる!自信を取り戻したのね、李梨沙!
そうよ、あなたは清純派トップアイドル。心配するような事は何もしてないわ!いくのよ李梨沙!私と共にアイドルの頂点へ!
……今日の俺の情緒一時期のビットコインくらい不安定だな。
「そうですか。どこのカフェですか?」
「あ、天神にある 『RA–PAN』って言うところです!SNS映えするランチメニュー等もありますので、是非!」
「……えぇ、また今度」
「あ、はい……」
バタン
李梨沙はそう言うと、ドアを閉め強制的に会話を終了させた。
……なーに浮かれて、折角の会話チャンスに営業マンしてんだよぉぉぉ。
それにSNSの総フォロワー数 約800万人 の最強インフルエンサーの李梨沙に勧めるようなことでもないだろ……
千堂大地、一生の不覚。だが、久しぶりに見れた李梨沙の笑顔、しっかりと脳に焼きつけれたからオッケーです!
……はぁ。
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