第3話

『サーチ!』

 私は探査魔法を用いて、体の異常を確認します。

「肺と膀胱に炎症が見られます。膝も少し痛いのではないですか?」

「はい。おっしゃる通りです。」

『ステリライズ!』

『ヒール!』

 続けて肺と膀胱に殺菌と治癒の魔法を施します。

 膝は治癒だけです。


 私はカバンから炎症止めと栄養剤を3日分取り出します。

 ある程度予想できたので、カバンに入れてあったのです。


「炎症止めの漢方薬と、栄養剤です。食事の後、15分くらい経ってから飲んでください。」

「はい。ありがとうございます。大分楽になりましたわ。」

「あとで、メイドを来させます。きちんと食事をとって、睡眠を十分にとってくださいね。」

「そこまでしていただく訳には……。」

「私の、婚約者のお母さまなのですから遠慮は要りませんわ。」

「こ、婚約者?……王女さまの……でございますか?」

「はい。お体が回復されましたら、城の近くに引っ越ししましょう。家は私の方で手配いたします。」

「えっ?」

「専属のメイドもつけますので、これからは苦労などさせませんわ。お義母さま。」


「シュリ様、本当によろしいのですか。ここまでしていただけるなんて。」

「婚約者なのですから、今後はシュリと呼んでくださいませ。私もソントクと呼ばせていただきます。」

「そ、それはかまいませんが……。」

「ただし、必要以上に干渉はしないこと。それだけ守っていただければ結構です。」

「はあ……。」

「ほかの女性とも普通に接していただいてかまいません。特別な関係でも良いですわ。」



「お父さま。私一般男性のソントク・ニノミーヤ氏と婚約いたしました。」

「な、何!」

「結婚するつもりでおりますので、近いうちに名誉男爵に任命してください。何か功績がひつようでしたら、私の共同研究者とでもしておいてください。」

「た、確かに十分な功績だが……。」


 こうして私の婚約は告知され、広く認知されることになりました。

 ソントクは私のブレーンに加わり、アイデアを提供してくれます。


「シュリ、こういう磨いたガラスを湾曲させて光を集めると像が映るんだ。」

「まあ!知りませんでしたわ。」

「多分、ちょっと工夫すればそのまま投影することもできるんじゃないかと思うんだけど。」

「確かにできそうに思いますわ。」

「そしたら、魔道具でこれを別の場所に送って見ることもできるんじゃないかな?」

「国境の監視とかに活用できそうですわね。でも、もし音を送ることが出来たら……。」

「あっ、拠点の町とも話せるように……。」

「素晴らしいアイデアですわ。」


 少し時間はかかりましたが、映像転送魔道具と、音声伝達魔道具が完成しました。

 公益に役立つため、国から報奨金が支給され、この功績でソントクは名誉男爵から男爵へと昇格したのです。


「お嬢さま、最近は楽しそうにしていらっしゃいますね。」

「そ、そうかしら?」

「はい。ドレスも嫌がられなくなってまいりましたし、お化粧もされていますよね。」

「ま、まあ、王族の一員として、人前に出る時はそれなりに……。」

「しかも、馬車でお出かけになることも増えましたし。」

「そりゃあ、ドレスなんだからスカイボードではいけないわよ。」

「わたくしたちメイド一同、ソントクさまに感謝しておりますわ。」

「な、何よそれ。」

 なぜか、顔が真っ赤になっている気がしました。

 どうなっているんでしょう……。

「そ、それよりも、出かけるわよ。」

「はい、ソントク様のお屋敷でございますね。」

「昨日完成した、改良型魔道コンロを馬車に積んでください。」

「はい。積み込み済みでございます。」

「お義母さまのアイデアを取り入れたものなんですからね。」

「はい。承知しております。」


 こうして私はソントクの家に出かけたのでした。


【あとがき】

 ツンデレ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る