第2話

「す、好きです。僕と付き合ってください。お願いします。」

「ごめんなさい。そういうのに興味ないの。」


 ああ、婚約者がいなくなると、途端にこういうのが増えてきます。

 私の財産狙いでしょうか……。


「せ、センパイのことが気になって……、眠れないんです。」

「ありがとう。これからも仲良くしてね。チュッ!」

 こういう可愛い娘には、希望を持たせておきます。

 卒業したらメイドになってもらえばいいからです。


 幼い頃から英才教育を受けてきた関係で、授業は余裕がありますし、魔法技師関連ではダントツのトップです。

 特に、魔法式の授業では、時々先生の代役を務めることもあるんです。


「シュリ様の授業は、とても分かりやすいです。」

「ありがとう。国の将来のためにも頑張ってね。」

「はい!」


 こんなふうに、男子には塩対応ですが、女生徒からは好かれているようです。


 週末の休みには城に帰ることが多いのですが……。

「シュリ、また婚約者から拒否されたようではないか。」

「お父さま、それは私のせいではありません。」

「いや、もう少し相手に関心を示してやればよいだろう。」

「興味のないものに興味を示すことなどできませんわ。いずれそういう方が現れると思いますので、どうかそれまでは自由にさせてくださいまし。」

「だが、そういう相手が現われなんだらどうするのだ。」

「御心配にはおよびません。私はひとりで生きていけますので。」

「確かにお前には十分な貯えがあるのだろう。だが、それでは子孫を残すことができぬではないか。」

「王家の血筋を残すのは、お兄さまとカイがいれば十分ではないですか。」

「おや、優秀なお前の血を残す方が重要だと思っているのだぞ。」

「私などに、後継者は必要ありません。」

「しかし……。」

「それ以上おっしゃるのであれば、私にも覚悟があります。」

「また、家を出ると私を脅すのか……。」

「当然でございます。」

「しかしなあ、婚約者がいなくなると、また周辺の国から……。」

「すべて断ってくださいまし。」


 はあ、お父さまとこの話をするのは何十回目でしょう。

 周辺の国も、いい加減あきらめてはくれないだろうかと思ってしまいます。


「姉上、また婚約の話ですか?」

「そうよ、何であきらめてくれないのかしら。」

「それは難しいですね。万が一、姉上が他国に嫁いでしまったら、国にとって大きな損害ですから。」

「いっそ、偽装結婚でもして……。」

「貴族相手に、それは難しいですね。」

「別に一般人でもかまわないわ。ねえ、カイの同級生で、そういう子いないかしら。」

「……。」

「愛人はいくら作ってもいいわ。働かなくても、私が養ってあげるし。」

「どこかのクズ男が聞いたら、飛び上がって喜びそうな条件ですね。」

「貧しい人でもいいんだけど……。」

「……あっ!」

「いるのね!」

「母親と二人暮らしで、奨学金をもらって入学した男がいるんですよ。」

「一般人なのね。」


 私は、弟であるカイにその貧乏な同級生ソントク・ニノミーヤ君を紹介してもらいました。

「お願いします。私の婚約者になってください。」

「お断りいたします。」

「な……、何故でしょう……か?」

「こんな僕でも、王女様の噂は聞いていますし、先日の全校集会も見ています。」

「……、支度金として金貨20枚用意しました。」

 私は彼の前に金貨20枚を積み上げました。

「婚約者ですね!承知いたしました!」


 ソントク君によると、お母さまの具合が悪いらしく、一度お医者さんに見せたかったのだそうです。

 ただ、とてもそんな余裕がなく、途方にくれていたんだとか。


「私、医療用の魔法にも長けていましてよ。少なくとも、そこいらの町医者よりは腕はよいと思います。」

 こうして私は、ソントク君のお母さまにお会いすることとなりました。


【あとがき】

 驚きの婚約者を買うという暴挙にでた主人公。行き当たりばったりの物語なので、これには私もビックリです!

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