第19話

 落ち着きが戻った時、ボロボロになったヒム隊長を見つけたので、私はケガをを治療し回復してあげた。

「うっ……うん。私は……。」

「馬の暴走に巻き込まれたようですね。」

「治療してくれたのか……申し訳ない。」

「残った人たちや遺体を持ち帰っていただかないと困りますから。」

「うっ、部隊は……壊滅か……。王子も……。」

「ええ。川に落ちたのが直接の死因でしょうね。」

「そうか……。」

「わたくしは、矢に反撃して雷撃を一発放っただけですから。」

「分かっている。先に手を出したのはこちらだ……。」

「こうなることが分かっていましたから、忠告いたしましたのに……。」


 ヒム隊長が帰ると約束してくれたので、私は町に戻り領事に結果を報告しました。

 そして城へと帰還し、陛下に結末を報告しました。

「ノア、ご苦労であったな。王族としての此度の働き誇りに思うぞ。」

「ありがたきお言葉に存じます。」


 単独で戦を回避した今回の功績は、広く周知されることになり、私の縁談話が急増したそうです。

 アカリお姉ちゃんも、副国王の秘書官として頭角を表し、有能ぶりを発揮しています。


「アカリ、また縁談の申し込みが来ているんだが……。」

「お父さま。やっと政治の面白さが分かってきましたのに、この仕事から引き離そうとおっしゃるのですか?」

「い、いや、そんなことは望んでいないが……。」

「では、いつものようにお断りしてくださいまし。」

「わ、分かった。」


 レイラとライラは、私と同じように冒険者登録をして、数か月でAランクまで上り詰めました。

 まだ若いということで、Sランクへの昇格は見送られていますが、時が繰れば確実に昇格するでしょう。

 ヒナちゃんも相変わらず元気です。




 いくつかの季節が巡り、私は20才になりました。

 とある日のこと、私はいつものようにヒナちゃんと一緒に依頼を終わらせ家に帰ります。

「あーあ、冒険者ギルドから家まで遠いのが難点よね……。」

「ピーっ!」

「ちょっとお腹すいちゃったわね。」

「ピッピーッ!」

「おっ、ノアちゃん、串焼きどうだい。」

 時々買って帰る串焼き屋台のおじさんから声をかけられました。

「あっ……、美味しそうな匂いが……。」

「今日のおすすめは水牛の肉だぜ。」

「えっ、水牛なの!じゃあ、30本買ってく!」

「おっ、嬉しいじゃねえか。じゃあ、一本おまけだ、ほれ。」

「あっ、ありがとう!うふっ。」

「ピーッ!」

 普段、屋台で食べることはしないのですが、おなかの空いていたいた私は誘惑に抗えず……。

 もちろん、小さく噛みちぎってヒナちゃんにもあげます。

「美味しいです。やっぱり、水牛は一味ちがいますね。」

「そうだろうとも。この柔らかさは水牛だけの特権だぜ。」

 30本焼きあがるのを待って、私はBSに収納して家に帰ります。

 お父さまもお母さまも、庶民の食べ物とか特に気にしないで食べてくれます。

 特に柔らかい水牛の串焼きは、メイドさんたちにも大人気です。


「ただいまー!」

「おかえりなさい。」

「串焼きは美味しかった?」

「えっ?」

 なぜ、串焼きを食べたことを知っているのか……、という驚きではない。その問いを発した人に驚いたのです。

「どうしてお母さまが……。」

 そこにいたのは、仲良さそうにお茶を飲むエレンお母さまと、私の生みの母であるカレンお母さまだったのです。

「ノアも二十歳になりましたからね。教えておかなくてはいけないことがあるのよ。まあ、エレンに任せておいても良かったんですけど。」

「あら、そこはお姉さまから直接お話しいただくのがしきたりですわ。」

 えっ、お姉さま……?


【あとがき】

 次回、最終話……の予定です。

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