第18話

 私は一番高い岩の上で敵軍を見下ろしています。

 そのうちに、敵兵が私を見つけて騒ぎ出します。

 まあ、見つかるように大きく手を振っていたんですけどね。


 私はレビテーション(空中浮遊)を使いながら敵兵の前に降り立ちます。

 当然、身体強化・物理障壁・魔法障壁を展開してあります。

 そうして、先頭の兵士に声をかけます。


「アマンド王国、王族のノア・ド・アマンドと申します。お見知りおきを。」

「な、なんの用だ!」

「この隊の責任者とお話ししたいんですけど。」

 少しして、兜に赤いふさふさのついた髭のおじさまがやってきました。

「隊長のヒムだ。王族だと聞いたが、見たところ冒険者のように見受けるが?」

「あっ、そうですよね。これ、冒険者証です。」

「ふむ。確かにアマンドの王族のようだな。で?」

「できれば、おとなしく引き返していただけませんか?」

「できると思うのか?」

「でも、ここを通るのは大変ですよ。」

「ふん。この程度の岩なら、魔法師に破壊させるわ。」

「まあ!優秀な魔法師がおられるんですね!」

「当然であろう。」

「でも、魔法防御をかけてありますのよ。」

「なに!」

「一応、物理防御もですけど。」

「ふん。だがお前がいなくなれば効果は消えるだろう。」

「さあ?お試しになりますか?」


 その時、きらびやかな鎧に身を包んだ若者が割り込んできました。ちょっと、頭の悪そうな……。

「何をやっておる!」

「あっ、王子。こちら……。」

「アマンド王国、ノア・ド・アマンドと申します。」

「ふん、アマンドの王族か。随分とみすぼらしい恰好をしているものだな。まあ、貧しい国だから仕方がないのか。」

「冒険者ですから。」

「だが喜べ。わがアルモ王国がこうして統治してやろうというのだ。光栄に思うがよい。」

「えっと、頭……、大丈夫ですか?」

「なに!」

「私も暇じゃないので、はやいところお帰りいただきたいのですが。」

「ヒム!とっととその女を始末してその邪魔な岩をどかして進まぬか!」

「はあ……、自己紹介もまともにできない男の相手は疲れました。ヒム隊長、私はあなた方のことを思って撤退を進言しているのですよ。」

「……。」

「こんなに、一列に伸びきった状態で、戦なんてできないでしょうに。」

「戦う相手などおらぬではないか。」

「あら。わたくしが相手では不足なのでしょうか?」

「ええいヒム、剣をよこせ。俺が叩ききってやるわ!」

 私に向かって走ってきた王子は、結界にはじかれて横を流れる川に落ちていきます。

「あらっ、フルアーマーで水浴びは危険ですわよ。」

「王子をお助けしろ!」

 10人ほどの兵士が水辺に駆け降りますが、ズルっと滑って次々に川底に沈んでいきました。

 水深は1メートル程ですが、パニック状態に陥った王子や兵士たちは起き上がれずにもがいています。

「何をしている。早くしろ!」


 10分程後、私の前には10名ほどが横たわり、必死の人工呼吸などの蘇生処置が行われていました。

「えっと、私は何の茶番を見せられているのでしょうか?」

 その時です、数本の矢が私めがけて打ち出されてきました。

 当然ですが、矢は結界にはじかれて地面に落下します。

「開戦ですね。承知いたしました。」

 私は矢の射出地点めがけて雷撃を放ちます。

 馬のいななきと兵士の悲鳴。それに触発して暴走する馬と混乱する兵士たち。

 逆走する馬により、混乱は広がっていきます。


 何十人もの兵士や馬たちが川に落下し、更に悲鳴が伝染し馬たちは駆け出します。

 こうして500騎ほどの騎馬隊は壊滅しました。



【あとがき】

 えっと……町の戦闘シーンが……。

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