第17話
翌日、私は陛下からの親書を携えてセルノに飛びました。
訪問先は、セルノ領事リポ・ド・サワクーシ伯爵です。
「おお、君が噂のノアさんだね。」
「はい。よろしくお願いいたします。」
「王族にしてSランク冒険者。そんな君が、数か月前にこの町で冒険者としてのスタートをきったと聞いてね。誇らしい限りだよ。」
「ありがとうございます。ここには家もありますので、私は今でもここの住人だと思っているんですよ。」
「うれしい事を言ってくれるね。それで、陛下からの親書には此度のアルモ王国からの侵略に備えて、君に陛下の代行権を託すとされているんだが……。」
その後で、拠点防衛隊の隊長と冒険者ギルドの長を連れて町の外に行き、結界を発動させて性能を確認していただきました。
「まさか、こんなに強力な防衛手段があったとは……。」
「ノア、こんなものを町にいた時に準備していたとは思わなかったよ。」
「ギルド長、アカリさんからスタンピード(魔物暴走)や隣国からの脅威について聞いていましたからね。その対策として準備しておいたんですよ。」
「いやあ、頼もしい限りですな。兵士にも有事には町から出ずに防戦するよう徹底しておかなくてはいけませんな。」
「そうですな隊長。俺も冒険者に徹底しておきますよ。」
それからは、毎日朝晩の2回、隣国まで飛んで出兵の様子などを確認することにしました。
当然、西方面の依頼をこなしながらです。
「さすがはノアさんですね。Aランクの依頼を一日に5件もこなすなんて、信じられませんよ。」
アカリお姉さまの後任で入ったというお姉さんが依頼書の処理をしながらそう言ってくれます。
「偵察がなければ、もっと受けられるんですけどね。」
「そちらが主目的ですから仕方ありませんよ。でも、片手間で5件ですか……。」
私は受け取った報奨金で砂糖・ミルク・玉子を大量に買い込み、プディングを大量に作って孤児院に差し入れをしました。
子供向けなので、カラメルソースはかけてありません。
「んめっ!」 「おいしい!」 「こんな食べ物があったなんて……。」
子供たちは突然のサプライズに大喜びしてくれています。
それから、以前ドレスを作ってもらった洋服屋さんを訪れ、金貨を30枚渡して定期的に孤児院へ服を届けてもらうようにお願いします。
「いいんですか。数量や金額の確認もできないのに……。」
「あははっ、信用していますから。」
「ありがとうございます。とーっても可愛い服をいっぱい作っちゃいますね。」
「お金が足りなくなったらいつでも知らせてください。すぐに持ってきますから。」
そうして数日を過ごすうちに、ついに動きがありました。
「アルモ王国から出兵を確認しました。兵力はおよそ3000。騎馬が500で残りは歩兵です。」
「歩兵が主体ならば、到着は10日程度だな。書記官、住民に今後は遠出を差し控えるように通達してくれ。」
「あれっ?」
「どうしました?」
「アルモとの交易はないっておっしゃっていましたよね。」
「昔はあったと聞いていますが……。」
「それならば、国境の山道を塞いでしまっても大丈夫ですよね?」
「そんなことが可能ならですが……。」
「それでも来ようとすると、道のない山越え……。確実に消耗しますわよね。」
「まあ、そうでしょうな。」
「ふむふむ。じゃあ、道を塞いでしまいましょう。メインの山道と、2本の林道を塞いでしまえばいいですね。」
それからの数日は、大岩を探してはBSに収納して山道を塞ぐ作業に没頭しました。
そうして、敵軍が出発してから5日目。敵軍は岩で塞いだ地点へと到達したのでした。
【あとがき】
うーん。町での防衛シーンばかり考えていたのですが、あれっもしかして……。
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