第16話

 はぐれドラゴンの討伐自体は報奨金が金貨2枚でしたが、ドラゴンと魔大蛇の買取価格は合計で金貨300枚になりました。

 全額をお父様に渡したのですが、嫁入り資金として自分で持っていろといわれてしまいました。


「その代わりというわけではないのだが、陛下に製氷魔道具と冷蔵魔道具が欲しいと言われてしまってな。頼めるかい。」

「はい。もちろんです。ほかの貴族から要望されるかもしれないので、30組くらい用意しておきましょうか。」

「ああ。実はほかからも希望が出ているんだ。頼んでいいかな。」

「承知いたしました。」


 私は前回頼んだ道具屋さんにいって50組の追加制作を頼みました。

「わかりました。50組となるとうちの職人だけでは手が足りないので、ほかの道具屋にも協力してもらいます。」

「外側の仕上げはお任せしますので、道具屋さんの個性が出そうですね。楽しみです。」

「はい!」

「そうそう。一組は陛下に献上するので、急ぎでお願いしますね。」


 王妃にも気に入っていただき、その実績に刺激されてお父様のところに依頼が相次ぐようになりました。

 セットでの謝礼は金貨50枚だそうです。そのうちの半分は家のお金として受け取っていただけました。

 お母さまはそのお金を還元するため、毎週のようにお茶会を開いてもてなしておられます。

 その影響もあってか、私たち姉妹にはとんでもない数の婚約申し込みが来ていたようですが、せっかく家族になれたんですものと、全部断っていただきました。


 並みの貴族でしたら、上下関係などで断れない場合……、現に過去の私がそうでした……もあるのですが、王族に限ってはその心配も無用でした。


 そんな平穏な日々を送っていた私たちですが、不穏な情報が伝わってきました。

 西にある隣国のアルモ王国が戦の準備を始めているという噂がギルドで囁かれていたのです。


「お父さま、アルモ王国の噂は本当なのでしょうか?」

「ただの噂だ。お前が心配することではない。」

「わたくしはSランク冒険者。国のために戦う義務がございます。ましてや王族。この身を呈して戦う覚悟はできています。」

「ノア……。」

「それにセルノはお姉さまと妹たちが育った町。何があっても守りたいのです。」

「……。」

「町を守るための用意はしてあります。私が行けば完璧に守って見せます。」

「用意だと?」

「町を守る結界の用意です。」

「結界とはなんだね?」

「町全体を覆う膜のようなもので、物理攻撃と魔法攻撃を防ぐことができます。」

「そんなことが可能なのか?」

「よろしければ、明日城で実演することも可能です。」


 翌日、朝のうちに結界の準備をして昼から実演することになりました。

 実演には陛下とすべての大臣が立ち会っています。

「……、作動いたしました。これで結界を通過できるのは私と姉妹たちだけになります。」

「うっ、確かに通れなくなりました。」

「では、攻撃してみてください。」

 ハンマー、槍、弓・剣で攻撃してもらいますが結界はびくともしません。

「魔法師、やるんだ!」

 長い詠唱が続き、魔法が発動されますがすべて霧散してしまいます。

「ご確認いただけたのでしたら、結界を解除いたしますが。」

「待て。最強魔法師の一団が残っている。最強魔法で攻撃する。用意!」

 また、無駄に長い詠唱が始まり、雷・氷・炎による魔法が繰り出されるも、すべてが無効でした。

「か、解除してくれ……。」

「はい。……解除しました。」

「おお。普通に通れるようになったぞ。」


「結界の作動中は、内側からの攻撃は素通りいたします。外に出ることも自由です。でも、一旦出てしまうと中に入ることはできなくなります。」

「内側からは攻撃し放題というわけか……。」

「これがあったら、一万の敵でも百人の兵士で壊滅できますな……。」

「一万程度なら、わたくし一人で大丈夫ですわ。」


「ノア、そんなことをしたら、嫁の貰い手がいなくなる。絶対にやめてくれ。」

 お父さまの言葉が重たく響きました。


【あとがき】

 もうひといきです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る