第20話

「じゃあ、何から話しましょうか?」

「えっと、お二人の関係からお願いします。」

「うん?エレンは私の妹で私たちは姉妹。それだけよ。」

「そうじゃなくって、どうしてこういう状況になっているんですか?何か意図的に行われているんですか?」

「ノアの様子はずっと見ていたけど、この状況は偶然よ。」

「見ていたって……、私、誰かに監視されていたんですか?」

「そうじゃないわ。ちょっと手を貸して。」

 私の両手はカレンお母様に握られた。

「目を閉じて、私に意識をあわせてね。」

 いわれたとおりにすると、私の意識は遥か上空にあった。

「この光は……。」

「それが人の意識よ。そして赤い光は私たちと同じ龍の民……。」

「龍の民って……。」

「それは後で説明してあげるわ。」

 そしてその中の一点に集中していくと、それはエレンお母さまのものだった。

 今、ここでお茶を飲んでおり、精神状態などがよくわかった。

「こうすれば、あなたが何処で何をしているかよくわかるのよ。さっき屋台で串焼きを食べていたこともね。」


 龍の民とは、起源は定かでないものの、現在の世界では137名いると言われました。

「龍の民は単為生殖(たんいせいしょく)で子供を残す、完全な女系の一族よ。」

「でも、カレンお母さまは結婚していて、私が生まれていますよね。」

「生殖行為行為は擬態みたいなもの。人との間に子供ができることはないの。」

「私もそうなのですか?」

「ええ。そのとおりよ。あなただって、王子に興味なんてなかったでしょ。」

「そうですけど……。」

「男と結婚するのは、単に社会の中に溶け込むための手段よ。だいたい2000年くらいの寿命があるから、ある程度まで年を経たら若い姿に戻って別の町で暮らすのよ。」

「若い姿って……。」

「私たちは、20才を過ぎるとほとんど外見の変化がないの。だから数年ごとに少し年をとった感じに姿を帰るのよ。こんな感じ……。」

 繋いだ手を通して、姿を変える魔力の流れがわかります。

「だから、あなたはこれからも好きなように生きなさい。親子関係は消えないから、私は死ぬまであなたの母親よ。」


「そうそう、あなたの発明したBS(ブランクスペース)は便利ね。今までは若返る時にカバン一つ分くらいしか持っていけなかったけど、全部持ち歩けるんだもの。」

 私は二人のお母さまにBSの作り方を教えてあげました。

 系統の違う魔法を使いこなしたり、無尽蔵の魔力を持っていること。詠唱なしで魔法を使えるのも、どうやら龍の民の特徴のようです。

 意識を共有する方法で、ヒナちゃんとも会話できるようになりました。


「じゃ、これで私は帰るから、暇があったらお茶でも飲みに来なさい。」

「わかりました。水牛の串焼きをお土産に持っていきますよ。」

 カレンお母さまも水牛の串焼きを気に入ってくれたようで、30本のお土産は二人のお母さまによってなくなってしまいました。


 それからの私は、人間として無意識にセーブしていたタガが外れたようで、魔法の威力が爆上がりしました。

 国内の迷宮はすべて制覇し、他国にも足を伸ばしています。


「ノア、久しぶりに美味しいカニが食べたいわね。」

 エレン母さまのいうカニは、深さ1000メートル付近にいたカニで、市場には出回っていません。

 仕方なく、海に穴を開けて私はカニやエビを大量に捕ってきます。

 ついでなので、カレンお母さまにもおすそ分けです。

「ああ、いい娘をもったわ。またお願いね。」


 今日は、エビ・カニ・ウニの海鮮パーティーです。


【あとがき】

 迷宮の令嬢完結です。ここまでお読みいただきありがとうございました。

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