第14話

「そういえば、氷を作ったり、ものを冷やしたりする魔道具ってないんですか?」

 私はメイドさんにそう聞いてみた。

「そんなものがあったら、ご主人様が真っ先に手に入れてまいりますわ。」


 気になった私は、城の資料室で魔道具についていろいろと調べてみました。

 その結果分かったことは、魔道具は魔素材と魔石を組み合わせて魔法効果を持たせたもののようです。

 魔素材とは、魔物由来のもので、クリスタルバードの羽やサラマンダー(火トカゲ)の皮、竜種の鱗などです。


「なんで、魔石に魔法を覚えさせるような使い方をしないのかしら?」

「えっ、魔法は詠唱によって効果が得られるものですから、そういうのは無理ですよ。」

 そう答えてくれたのは、案内してくれた魔法局のエリーさんです。

 ピンクのショートカットにそばかす顔が可愛い方です。

「無詠唱の魔法を使える方はいないんですか?」

「簡単な魔法を無詠唱で使う方もおられますが、実際には声に出さないだけで詠唱事態はおこなっているそうですよ。」

「えっ、そうなんですか……、それじゃあ、魔石に魔法を覚えさせるなんて無理ですね。」

「だって、そんなことができたら、誰でも空を飛べちゃうじゃないですか。そういうのも楽しそうですけどね。」

「あはは。そうですよね。」


 魔道具の種類が少ないのはそういうことだったんですね。

 じゃあ、欲しいものがあったら、私が作ればいいじゃないですか。

「これは、楽しくなってきましたわね。」

 私は道具屋さんに行って、箱を二つ注文します。

「えっと、内側に断熱材を張って、さらにその内側に鉄板をはるっと。」

「はい。それでお願いします。」

「外側はどうしますか?」

「キッチンに置くんですけど、やっぱり白とかですかね。」

「ほかにも、マーブルとか花柄でもいいんじゃないですかね。」

「あっ、花柄でお願いします。」


 数日して、出来上がった箱を持ち帰り、私はキッチンに据え付けた。

「何かしら、この箱?」

「まあ、楽しみにしていてください。」

 私は魔石に魔法を覚えさせて、内側に作った魔石の収容位置にセットする。

「こっちの箱から、ガラガラと音がするんですが……。」

 メイドさんからそういわれたので、開けてみるように告げます。

「えっ、……こ、これって!」

「すごいです。箱いっぱいに氷ができています。」

 もう一人のメイドさんが驚いた声をあげます。

「ええ、コップに入るくらいの氷を、この線まで自動で作る魔道具です。」

「そんな魔道具、聞いたことがありません。」

「私のオリジナルです。もう一つの方は、凍らない程度に中を冷やす魔道具です。」

「冷やす?」

「ミルクを冷たくしておいたり、肉や魚を入れておけば2・3日は大丈夫だと思いますよ。」

「た、確かに……そうですわね。これも、聞いたことがありませんわ。」


 ほかにも、リビングに温冷風を吹き出すものや、天井で空気を攪拌するファン。庭には散水する道具やキッチンに高性能の魔導コンロを設置したりして、屋敷の快適さは増していきました。

「こんなに快適になってくると、外に出なくなってしまいますわね。」

「私は、魔石集めの迷宮探索とかありますから大丈夫ですけど、みなさん外出しなくなりましたよね。」

「大丈夫ですわ。アカリさんは明日から副国王の秘書官として城務めしていただきますし、他の二人もダンスのレッスンを受けていただきますから。」

「「「えっ!」」」

「あら、不服なのかしら?」

「「「いえ、喜んで!」」」

「そう。お母さんうれしいわ。素直な娘たちで。」


こうして、アマンド公爵家の姉妹は忙しい日々を送るのでした。


【あとがき】

 まともに細かく書いていったら長編になりそうなので、結構細かな描写は省いています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る