第12話
翌朝、私は天蓋つきのフカフカベッドで目を覚ましました。
寝間着を脱いで、いつもの冒険者用の服を着ていたらメイドさんに怒られてしまいました。
「こちらが、奥様がご用意くださったお洋服です。」
部屋の箪笥から取り出した上下の服を着るように指示されます。
白いコットンのシャツと、紺のズボンです。確かに、冒険者でも着られるゆったりとした作りです。
メイドさんに髪を整えてもらい階下に降りていくと、お義母さまはもう起きていらっしゃいました。
「おはようございます。お義母さま。」
「おはよう。うん、清潔感があっていいわね。似合っているわよ。」
「お義母さまのお見立てだそうで、ありがとうございます。」
「うーん……、そのお義母さまってしっくり来ないわね。」
「えっ?」
「いいこと、私は本当の娘ができたと思っているのよ。」
「はい。ありがとうございます。」
「だからあなたたちにも、本当の母親だと思ってほしいの。」
「……。」
「私なら、あなたの望まない婚約なんかしないわ。たとえ相手が王子であろうと。」
「それは……。」
「本当なら、危険な冒険者なんかやめてほしい……。でも、それがあなたの望みなら反対しないわ。」
「お……かあさま……。」
「だから、何があってもこの家に帰ってくるのよ。絶対に……。」
「おかあさま。」
「やっとできた娘だもの、絶対に離さないわよ。」
「本当に……いいんですか……。」
「ノア……。やっとできた私の娘……。」
私はやさしく抱かれました。
「お母さま……。」
私の欲しかったもの……。
家族の……愛。
この、異国の地で、やっと手に入れた家族。
もう、離さない……。
「おはようございます……って、どうしたの、二人とも目が真っ赤よ。」
「なんでもないです……って、かわいい!」
「うふっ。そうね、三人とも可愛いわ。」
「いや、レイラとライラは可愛いけど、私は可愛いっていう年じゃないし……。」
そういうアカリお姉ちゃんは、まんざらでもないのか耳まで赤くなっています。
「「おはようございます。」」
「あらあら、レイラとライラは本当に天使みたいね。どうしましょう、こんなに可愛い娘に囲まれる日が来るなんて……。」
そういうお母さんは、センター分けで柔らかいウエーブのかかった栗色の髪。セミロングに色白の肌はとても可愛かったりするんです。
アカリさんと並ぶと姉妹のように見えます。
現に、このあとアマンド公爵家の5姉妹と呼ばれたりするんですよ。
「えへへっ、お母さんができちゃった。」 「お父さんもできたしねーっ。」
私たちはセルノ町に向かう馬車の中にいます。
定期馬車で行くという私たちに、お母様は家の馬車で行くように言われ、言い切られてしまいました。
メイドさん二人を同行させるというのを断るのに一苦労でした。
「本当に夢みたい。私が貴族家の養女になるなんて……。」
「養女なんていうと、またお母様に怒られるわよ。」
「仕方ないじゃない。アカリ・ド・アマンドなんて実感できるわけないでしょ。」
「レイラもアマンド!」 「ライラもアマンド!」 「ピッピーッ!」
「うふふっ、ヒナちゃんもアマンドだよねー。」
最初にギルドへ挨拶に行きます。
「ノアはその可能性があると思っていたんだが、まさかアカリまで取られるとはな……。」
ギルド長はそういいながらも笑って送り出してくれました。
貯金を全額引き出した私は、アカリさんと相談してギルド内の酒場に金貨3枚渡してお金の続く範囲で皆さんに飲んでもらうよう言づけます。
それから孤児院の園長さんにご挨拶です。
孤児院には金貨10枚寄付してきました。
家はそのままにしておきます。またセルノに来た時に使えばいいんです。
冒険者である私は、依頼でこっちに来ることもあるでしょう。
「何か、お母さまたちにお土産買って行きませんか?」
「そうね。あっ、領事館の前にある洋菓子屋さん。行ったことはないんだけど、王都からも食べにくるくらい人気なんだって。」
日持ちしない菓子だそうで、この町でしか食べられないらしいです。
【あとがき】
次回からは、貴族生活編になります。
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