第11話
「照会のあった当初はな、国内を捜索させてくれと言ってきおった。無論断ったがな。」
「ご配慮いただき、ありがとうございます。」
「で、何があったのじゃ。」
「……、実は、王子から突然、婚約破棄を告げられました。それも、舞踏会という衆目の中でです。」
「確か、セロといったな。うつけとは聞いていたが、そこまで愚かとはな。」
「王子にも国にも愛想が尽きましたので、国を飛び出た次第です。」
「後悔はないのか?」
「ございません。まだ、二か月ですが、新しい居場所を見つけました。この国でノアとして生活したいと思います。」
「Sランク冒険者は国の宝だ。だが、それだけではファン王国の目から逃れるのは難しいやもしれんな……。」
「そんな……。」
「だがな、確実に国の庇護下に入る方法がある。」
「それは……。」
「レオ、お前の家で養女として迎え入れろ。」
「わたくしの方は構いませぬが。」
発言した人を見ると……、陛下と似た顔をしていました。ヒゲがないだけで……。
「せっかくのお申し出ですが、私にはすでに3人の家族がおります。」
後ろに立つ3人を示しながらそう言ったのですが……。
「あはは、レオよ、養女は4姉妹だそうだ。」
「陛下、二言はないでしょうな?」
「ない。」
「ご存じの通り、我が家は子を作っておりません。」
「お前と俺との約定だからな。」
「そのような状況で、このように可憐な4人を迎えれば、妻は大喜びするでしょう。」
「ああ、目に浮かぶようだ。」
「万が一にでも、それが取り消されるようなことになったら、妻は死ぬのではないかと……。」
「わかっている。これは確定事項だ。」
「あの……恐れながら申し上げます。」
「なんだ?」
「ノアはともかく、私たち三人は孤児でございます……。とても、貴族のお身内になれるような人間ではございません。」
「我が国の民に、孤児だとか貴族だとかいう違いはないぞ。それとも副国王の養女が不満か?」
「め、滅相もございません……。」
「レオ!そのニヤケ顔はやめろ!」
「だって、いきなり可愛い娘が4人ですよ。明日から婚約の申し入れが殺到しそうで……。」
なんだかよく分からないままに、公爵家の養女になってしまいました。
ともあれ、これで4人は本当の姉妹になりました。
パーティーの前に、私たち4人はレオ公爵……、いえお義父さまに連れられ屋敷にご挨拶です。
お屋敷は、城の2軒隣でした。
「帰ったぞ。」
「お帰りなさいませ。あなた。」 「「お帰りなさいませ!ご主人様!」」
「あら?そちらの可愛らしいお嬢様方は?」
「今日から我が家の娘になる。陛下のご指示だ。」
「えっ、まさか……。」
「これが、お前たちの母になるエレンだ。」
私はぽかんとしているアカリさんを肘でつついて促します。
「あっ、私はアカリと申します。よっ、よろしくお願い申し上げます。」
プッとエレンさんとメイドさんたちが吹き出します。
「ノアでございます。」
「レイラでございます。」 「ライラでございます。」
「エレンです。本気のホントなのね……。」
「パーティーが終わったら帰ってくるから、部屋の手配などを頼む。」
「なんでこんなに可愛いお嬢さんが?」
「詳しい話は帰ってからだが、4人とも親はいないものと思ってくれ。」
「そう……なの。私、本気で可愛がってしまいますわよ。よろしいんですね。」
「ああ。そうしてくれ。」
「承知いたしました。さあ、あなたたち、聞いた通りよ。半分は部屋の準備、残りは体の採寸をして仕立て屋に行って……、いえ仕立て屋には私も行くわ。」
ハイ!っとメイドさんたちが元気に応じます。
「いや、お前が行かなくても……。」
「何をおっしゃるの。娘の寝巻や明日着る服を選ぶのよ。母親が行かなくて誰が行くというんですの!」
「あっ、ああ……。こうなるとは思ってたんだよな。お前たち、当分は着せ替え人形だからな。」
「「「は、はい……。」」」
ああ、レイラとライラを着せ替え人形にする私の夢は断たれてしまったのかもしれない。
「ピッピー!」
ヒナちゃんが嬉しそうに飛び回っていました。
【あとがき】
いきなりの公爵家養子縁組……。Sランク冒険者を手勢に加えるのは、全貴族にとってメリットしかありませんので、不公平のないように王族で確保っていうことです。
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