第10話

「さすが王都ですね。賑やかでお店もいっぱいあります。」

「すごいです!」 「こんなところ、初めてです!」 「ピーッ!」


 私たちは、王都の町を散策しています。

 ファン王国の王都で育った私ですが、貴族街しか知りませんので、ワクワクがとまりません。

 認定式は明日なので、今日は何をしても許されるのです。

「そういえばノア、髪の毛はどうするの?さすがにドレスでその頭はないわよね。」

 そう、国を飛び出した時に自分で切った時のままで、多少伸びたとはいえ手入れをしたことはなかった。

「どうしよう……、忘れていました。」

「そんなことだと思ったわ。ほら、そこに髪結いがあるから、今のうちに切っておいたらどう?」

「そうですね。レイラとライラも一緒に行きましょ。」

「えーっ、私たちは大丈夫ですよ。」

「どうせなら、4人でカットしましょうよ。」


 髪結い処は幸いほかのお客さんがおらず、私たちはすぐに切ってもらえました。

「すみません。明日陛下の前でドレスを着るので、女性らしい髪型にしてください。」

「そうですね、じゃあ内向きのボブで、前髪はシースルーにして明るく仕上げましょうか。」

「は、はい。それでお願いします。」

 正直に言って、意味がわからなかった……。

 髪なんて、毎朝メイドさんに任せていたからです。


「ど、どうでしょうか?」

「いいんじゃない。女の子っぽくなったわよ。」

「ノアさん、素敵です。」 「お嬢様みたいです。」


 そのあとは買い食いしたり、小物を買ったりして宿屋に帰りました。


 翌朝、身支度を整えて辻馬車で城まで移動します。

 案内された大広間横の控室で待っていると、身分の高そうなオジサマがやってきました。

 私はカテーシーでご挨拶します。

「それで、当事者のノアという冒険者はどこに行ったのかね?」

「ノアはわたくしでございますが。」

「……なにぃ!じょ、女性で……しかもこんなに若くしてSランクと申すのか。」

「お言葉ですが、ノアは魔法使いと僧侶の特性を備え、しかも術のレベルが他の追随を許さぬほどの実力者でございます。私共のギルド長が自信をもって推挙させていただきました。」

「うむ。外見で判断したわしが愚かじゃったな。許せ。」

「いえ、滅相もございません。」

「これまでにも女性のSランクはおったが、ドレス姿というのは初めてじゃな。」

「いけなかった……でしょうか。」

「いや、問題はないが、まあ、カテーシーができるのであれば問題なかろう。」

「一通りの作法は心得ておりますので。」

「うん?そなたは貴族なのか?」

「はい。この国の生まれではございませんが。」

「Sランクになるということは、この国に忠誠を誓うことになるのだが……。」

「もう、国は捨てておりますので問題はございません。」


 数十分後、私は陛下から直接冒険者証を授与され、正式にSランク冒険者となりました。

 この国で35番目のSランク冒険者だそうです。

 夕方から披露宴があるとのことでしたが、そのまえに陛下との懇談がセットされていました。


 応接室に通され、座って待つようにいわれましたが、四人とも立って陛下をお待ちします。

「座っておってもよいぞ。」

「いえ、そのような不躾な真似はできません。」

 少しして陛下が入室されてきました。

 私は視線を落したままカテーシーでご挨拶いたします。

 陛下が最初に着座し、座るように促されてから着座します。

 私が座らないと、ほかの方が座れません。


「顔をあげてくれ。」

 そういわれて初めて視線をあげます。


「うん。金髪に碧眼、ノア・コンラッド嬢でよいかな?」

「ご存じでしたか……。」

「ああ。ふた月ほど前になるか。ファン王国より照会が来ておった。」

「ご迷惑をおかけいたします。」

「迷惑なものか。これほど優れた賢者殿が我が国を選んでくれたのだ。心から歓迎するぞ。」

「恐縮でございます。」



【あとがき】

 国王との面会です。どう展開するのでしょうか。

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