第9話
3人の魔力を毎日増やしていった7日目です。
「うん。十分に魔力は体中にいきわたっているわね。」
「「はい!」」 「ピーッ!」
「じゃあ、今日からは魔法の実践よ。最初は身体強化ね。私の中の魔力の動きをよく見ててね。」
3人で手をつないだまま私は身体強化を発動しました。
「えっ、魔法って呪文を唱えるんじゃないんですか?」
「私もそう思っていました。」
「それは単なる思い込みよ。大切なのは魔力をうまく働かせることと効果を具体的にイメージすること。」
そういって私は横にあった木片を二本の指でつぶしてみせた。
「慣れるまでは”身体強化”って、言葉に出したほうがいいかもね。」
「ピッピーッ!」
ヒナちゃんは小さく囀るとピョコピョコと小刻みに跳んできて横にあった木片を足で握りつぶした。
「すごい!ヒナちゃん一発でできたのね。」
「ピーッ!」
「むうっ、私たちだって負けていられません!」 「そうですわ。」
私は、ほかに思いついたことがありました。
道具屋に行って布袋を10枚買い込んできます。
「袋くらいなら、私たちが作れますのに。」
「いいのいいの。破るために買ってきたんだから。」
「破るんですか?」
「うん。まあ、成功したら教えるよ。自分でも、おかしなこと考えたなと思っているんだからさ。」
「とりあえず2倍をイメージして……。」
バリッ!
「やっぱり力技じゃ無理だよね。どうしたらいいんだろう……。」
袋の中に結界を作って、それを拡大しようとしたところ、奇妙なことに気が付きました。
「あれっ、袋の中で結界を作ると、袋の外には結界ができてないわ。これって……。」
袋の中で袋の大きさ以上の結界を作ったところ、確かに袋の中には結界ができているものの、本来袋の中から外に突き出そうなものなのですが、袋の外には影響が出ていませんでした。
「これって、袋の中の空間と、外の空間は違うってことよね……。」
三日間試行錯誤を重ねて、この間ダメにした袋は29枚。そして四日目の深夜、ついに袋の中に別の空間を作ることができました。
「ホントに……、できたのかな?」
いろいろな不具合を解消してレイラとライラにも使ってもらいましたが、アカリさんには使えませんでした。
レイラとライラは私の魔力が元にあるのでその影響だと思います。私は特注のリュックを購入して、この能力にBS(ブランクスペース)と名づけました。本来使わない空間だからです。
「ノアさん、これすっごく便利です。」 「買い物で荷物の量と重さを考えなくてよくなりました。」
「それに、買った串焼きなんかが冷めないんですよね。」
「えっ、ホントに?」
すぐに確認したところ、氷は時間をおいても氷だし、熱いものは熱いままです。
「この中って、時間が止まっているか、ゆっくりみたいね。これなら出先でも出来立てのご飯を食べられるわ。」
それから数日して、王都から認定式の案内状が届きました。
私たちは仕立てたドレスをBSに入れて出発します。ドレスが出来上がってきた日に、アカリさんから文句が出たので四人とも新調したドレスです。
お金も余分に持ってきました。BSが完成してから、狩猟の依頼も効率的にこなせていますから、貯金は増える一方です。
アカリさんは馬車ですが、私たちはレビテーションで飛んでいきます。ヒナちゃんは元々飛べますし、二人もレビテーションを覚えました。
氷魔法や炎魔法・治癒など一通りの魔法は使えるようになっています。
「楽しいです。」 「空を飛ぶって、こんなに快適なのですね。」 「ピーッ!」
高速ではないため、普段着のまま飛んでいます。
時折現れる魔物を討伐しつつ、私たちは王都に到着しました。
【あとがき】
短編なのでもっと簡単に終わらせる予定だったのですが、楽しくなってきたのでつい長くなってしまいました。
どうしよう。終わりそうにないぞ……。
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