第7話

「さて、昨日の訓練はどうだったかしら?」

 

 翌朝、私はヒナちゃんを含めて二人と手をつなぎながらそう聞きます。

「「頑張りました!」」「ピーッ!」

「うん、3人とも頑張りましたね。じゃあ、今日も魔力を流しますから、1日かけて全身に巡らせるようにしてくださいね。」

「「はい!」」「ピーッ!」

 私は、昨日よりも多めの魔力を3人に流します。

「これでよしっと。今日はお仕事に行ってきますから、3人はお留守番で魔力を巡らせる訓練をしてください。わかりましたか?」

「「はい、頑張ります!」」「ピーッ!」


 お仕事というのは、当然依頼の受注です。

 Sランクはまだだけど、Aランクは口頭で昇格済みなので、Aランク込みで探します。


「あっ、ノア、いいところに来てくれたわ。」

 依頼掲示板を見ていたら、アカリさんから声がかかりました。

「何かありました?」

「うん。緊急依頼が届いたところなの。」

「緊急……ですか。」

「ええ。大鬼(オーガ)の討伐なんだけど、場所が北の外れの村なのよ。」

「北の……外れ……ですか。」

「オーガ一体につき銀貨5枚。それと、遠隔地だから国から補助で金貨1枚が支給されるわ。」

「オーガは何体くらい出現しているんですか?」

「3体までは確認できているようなんだけど、未確認よ。」

「3体も出ているんじゃ困っているでしょうね。わかりました。行ってきます。」


 魔物には3っつの種類があります。

 ひとつは生物由来のもので、これは魔力を得た人間と同じように魔力を持った獣です。魔狼・魔熊・魔猫・魔牛など様々な種類が確認されていますが、人間と同じように見た目で判断はできません。

 ふたつめは魔力が凝縮して実態を得たもので、小鬼(ゴブリン)や大鬼(オーガ)の他、悪魔系といわれるものが確認されています。特徴としては、人格のようなものはなく、単純な破壊のみを行う存在です。

 みっつめは龍種で、元々魔力を有しているといわれる存在です。龍種については、接触した人間がほとんどいないため、存在することは確認されているもののよく分かっていません。

 そのほかにも、実態を持たない霊的な魔物が存在するとも言われていますが、噂にすぎないという説もあるようです。


 私はマントに包まれて山を超えています。

 多分、あの先に見えるのが北の外れの村でしょう。

 この村に来るために山を迂回すると1日半かかるのだそうです。


「この様子だと、まだ被害は出ていないみたいですね。」

 私は村の真ん中にる広場に着地します。

「なんだ!」 「人が降ってきた!」

 騒然とする村人にはかかわらず、村長の家を教えてもらい状況を確認します。

 目撃情報を確認してレビテーションでその方向を探すと、すぐに一匹の大鬼(オーガ)が見つかりました。

 私は自分の周りに物理障壁をめぐらせてからオーガの正面に移動します。

 体高3メートル、青い肌をしたオーガは棍棒を振り上げて私に向かってきます。


「まずは、氷矢(アイスアロー)でどうかな?」

 パヒュッ!パヒュッ! ドス!ドス!

「うーん、傷がすぐに塞がっちゃうのね。痛みも感じないみたいだし。じゃあ、腕を落としたらどうかしら。」

 アイスブレードを発動します。

 バシュ! ザン!

「あらら、再生しちゃうんだ。じゃあ、焼いたらどうなるのかしら。……まったく効かないのね。」

 オーガの攻撃を躱しながらいろいろな魔法を試します。

「ダメですか。やっぱり学園で習ったように首を落とすしかなさそうですね。」

 高速レビテーションでオーガの後方に回り込んで首筋に氷刃(アイスブレード)を打ち込みます。

 あっさりと首が胴体を離れ、全体が靄のようにかすんで収縮していきます。

「へえ、こうして魔石になるんだ。うん。上質の魔石ね。」


 上空からオーガを探して片づけていきます。

 2匹目からは余計なことはしないで単純に首を落とすので時間はかかりません。

 あっという間に、村近くにいた3匹を屠りました。



【あとがき】

 ノアは実戦経験が少ないので、いろいろと確認しながらの討伐になります。

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