第5話、飢饉

魔王といえど彼らの敵ではなかった。


『爆雷!』 『アースシェイク!』 『拘束!』


「とどめだー!『テラ・インパクト!』」


かくして世界の危機は解消され、各国より集められた報奨金は金貨2万枚に及んだ。

彼らはそのお金で町に農業と畜産業を興し、同時に住民を確保した。

収穫までの間も、各国を飛び回り高難度の依頼をこなしていく。

やがて、町には酒場と冒険者ギルドが建てられ、人員は加速度的に増えていく。



「こんなところかしら」


「そうだね。そろそろ独立を宣言しようか」


独立国家フリータウンはこうして単独国家になった。

治政は議会制をとり、王国制でないのはこの世界で初めてのことだった。

彼らは相談役として議会の外側に位置し、よほどのことがなければ口出ししない。


搾取するモノがいなければ税金も安い。

そして、土木・建築費用がかからないことから、その費用を福利厚生に充てられる。

これらは、国の中にいては実現できないことだった。

だからこそ彼らは国を出たのだ。

理想とする国を作るために。


一方で、マルタ王国は天候不順で不作に苦しんでいた。

そこに追い打ちをかjけるように王子の結婚やら戴冠式やらで行事が重なり、税率が引き上げられていく。

住民は我先に国外へ逃れ、フリータウンへ移住していく。


弱り切った王国は外敵を呼び寄せて国は滅んでいく。

数年続いた不作で主だった王国は倒れ、小国が乱立する。そんな世の中になっていた。


「また住民が増えてきたね。

そろそろ町を拡張しないといけないね」


「でも、備蓄食料もそろそろ限界よ」


「そしたら、海で魚でも捕ってくるよ」


「大変です。

また、大群が押し寄せてきます」


「はあ、懲りないよな。

やっぱり全滅させないとダメかな」


「いえ、これまでどおり、マヒでお願い」


「へいへい、行ってきますよ」



フリータウンに軍隊はない。

外敵は6人が対応しているからだ。

そして、戦においても原則殺しはしない。

電撃によるマヒで戦闘不能にするだけだ。


6人の親族も何人か庇護を求めてやってきたが、基本的には優遇などしない。

他の住人と同じように働き、糧を得ている。


アーチャの妹ルイーザも同様であった。

来たことは知っているが会うことはない。

会えば言いたい放題となることをアーチャは知っている。


こうして、フリータウンは厳しい環境にも耐え、発展していくのであった。

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