Feige

第16話 Feige_01


 「言ったでしょ?目的地が同じって。師匠が『貴方と行けば案内してくれる』と言ったの」

「師匠?誰のこと」

「師匠じゃ分からないか。店のオーナーよ、帰り際に目礼してたでしょ?『秘密を共有する間柄』と聞いたけど、違う?」

「ちょっと待て!その話。此処じゃ不味い……取り敢えずあそこに移動しよう(おいおい店主、どういった了見だ)」


 無人になっている喫煙スペースに連れて入り、電光掲示板で発車時刻までどれ位か確認した。 簡単に声を拾う物は無いかも確認する。

 そして私は Cigaretタバコを一本、取り出し着火して深く吸い込む。


(十数分あるな。早く吐かせてあの列車に乗らないと)

「それで、何処まで知っている。何故、店主を師匠と呼ぶ。答えろ」

「……」

「黙ってるなら今日、君は目的地に行けないな」

「あのさ、オジサン」

「ああ何だ」

「オジサンに見えて、私と同じなんんだってね」

「同じとは?」

「貴方、Doomsday終末の Seeds種実 なのよね?私より上か知らないけど、大差ない筈。何年生まれ?」


 会話を聞く者はいないと思うが、私は周囲を見回した。


「キャハハハ、動揺しちゃって。可愛い〜」

「おい!警告する。これ以上の失言があれば脅しと捉え、お前も店主も告発する。店主とは単にだ。向こうもそう承知しているだろう」

「それは困るわ。今日中にホテルにチェックインしないといけないし……私なのよ」

「(アノ期間って何だ?)……期間とは?」

「義務よ。分かるでしょ“ 卵子排出の期間 ”、アレ提出しないと。男子は精子……」

「分かったから黙れ。いや黙ってくれ。話さないで(何なんだこの女は)」

「クックッ……アハハハ、ごめんなさい。師匠の言ったか通りの反応だから。『女っ気が無くてピュアな人だ』と言うのは本当なのね。分かった、貴方を信用する。後は列車に乗ってから話すわ」


 顔の熱から自分が赤面してると判る。

 見た目だけと云え、年配者の私を手玉に取ろうとは……

 (この女、大しただな。店主はこの女を利用して何を企てる?)


「車内は危険では?他人も居るし、盗聴されてないとも言えないだろう。デザイナーズホテルで話すのが妥当だ」

「ホテルは盗聴されるわ。貴方はを埋め込まれていないんだもの。確実に室内にがある筈よ」

「“ 音声通信 ”……それが私に無いと何故分かる」

「もう時間が無い。外の人も焦れてるわ。列車に乗りましょう」


 電光掲示板を見ると発車時刻が迫っている。 このまま簡易宿泊所に戻ることも考えたが、監視者のことも把握するこいつらの思惑も放って於けない。

 (監視者が黙認しているのも疑問だ)


 危険だが申し出に従い、列車に同乗することにした。



 

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