第13話 Fico_02
「エドはいいなぁ。俺も Med 辺りのエリアがパトロンにならないかな〜。」
「お前は ASEAN が多かったな、何でだ?」
エイドリックがゴクウーに聞き返した。
ゴクウーはエイドリックより幾分歳上だが、訳あってクラスは同級であった。
幼児期に招集された入所者にあって、先天性の難病を数年掛かって完治させた。 その間、医療ルームに他の者と隔離されていたと聞く。 言うことは幼っぽいが実年齢はいい大人だ。
「長期休暇にバカンスしに行きたいんだけどよ。候補地ってアジアばっかりじゃん!もういいてぇーの。」
「南国の島で遊び呆けてるんだろ?いいじゃないか。」
「いやいや、だからさっ、今回は別のエリアに希望出したのさ!色んな意味で見識っての?広げる目的で、って。」
「何をいけしゃあしゃあと。目的は目的でもお前の場合、女に股を広げさせる、だろ。んなのどれも同じだよ。しかしお前はそれしか浮かばないのね。」
「パトロン喜ばす為じゃん!考えてみろよ、俺ココにいるヤツらでは一番長いんだぜ?一番長く生き残ってる。って言うことは一番金出して貰ってるって事だろ?俺得意なこと無いしさ……所詮俺ら“ プバ ”じゃん?」
「“プバ?」 聞き慣れぬ単語に私が言い重ねた。
「“
「ああフね、フ、フフフだ。これ俺達だけの隠語だよ。“
二人に教わり何となく理解する。 エイドリックも検体採取を“
「そうだ!キヨウのパトロン……ドナーエリアに Med 無い?」
「ドナーエリア?」
「キォウは
「ああ…… for sale ってことか。キヨウ、ドナーはな、イイぜぇ。俺を治してくれたのもドナーの内の一つだし。眼だって足だって臓器だって、悪くなったら新鮮なのを速攻で送ってくるんだ!ココに来る前にいっぱい検査したろ?」
「入所前検査?」
「そうそうソレ。身体中の状態を調べあげるんだ。異常なとこ無いか?とかも。振るいに掛けられるヤツもいるらしいぜ。」
「振るいかい?どうしてさ。」
「それはな。死にそうなヤツにはドナーが付かない。だからココに入れないのさ。安心しろ、キヨウは元気だからすぐに……」
「で?それが何?お前はどうしたいの。それにコイツは“ キォウ ”だ」 何故かエイドリックが怒っている様に見えた。
「え、え?だから……俺がやれることって……例えば俺が誰でもいいから女に子を産ませたら!ドナーエリアに配当金が渡るじゃん。コレって最高に恩返しになるだろ?」
「……」
「今までは相手が悪かったんだよ。女の種類が変われば違ってくるって思わないか?」
「恩を返す必要はあるのか!」
「必要と言うか、
「ああ、分からないね!」
「どうしたんだよ、二人とも変だよ。いつも仲良いじゃないか。」 不穏な空気に我慢できず割って入った。
「ゴクウー……お前な?実際子供が出来たらどうするつもりなのよ。まあいい、もうちょっと、自分自身のことを大切にして欲しい。どうしてもって事なら都合つけてやるよ、言えばいい。俺が今言えるのはそれだけだ。」
ゴクウーを残し、私を連れて部屋に戻ってから『そのうちに正式な説明が有るだろうけど 序ついでだから』とドナーエリアや、入所前検査の表裏をエイドリックが説明してくれた。
ドナーとは、良く言えば“ あしながおじさん ”、その実は競走馬の共同馬主みたいな物。 検査は免疫系の調査云々。 これは繁殖馬を値踏みさせる為のセールスとなる。
胴元は
『他の者に賭けるエリアには行かぬ方が良い。無事に戻れる保証はないから』と。
そしてゴクウーのことも心配げに話した。
年齢的に退所が迫る今、進学が絶望視され、このところ平静を欠いている。 なのに、危険なエリアに旅行したがるのは奇妙で胸騒ぎがする、と。
「猫が死期が近づくと居なくなるのと同じ?」 何気なく言ったことが的中することとなり、弱冠十二歳の私をゾッとさせた。
数ヵ月後、バカンスで行った渡航先で風邪を拗らせ、これが完治した筈の病いを再発させた、と。 ゴクウーは魂はそのまま去り、ただ骸だけが此処に戻された。
「俺なら何も遺さない」 ゴクウーの何を指して呟いたのか、この時まだ彼には訊かなかった。
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