第11話 Fig_05


 私が11歳の時、召喚されいった無花果イチジクの学業施設でエイドリックと知り合った。

 彼は6歳の時からそこにいた。

 私の何が気に入ったのか何かにつけ行動を密にしたがった。


 集団生活に慣れていない者達の中、私もこれに漏れずで他者の心が読めず、彼の雅量に戸惑っていた。

 だが場の雰囲気を読みながら積極的に自分を通し、大人を上手く扱うことの出来る彼に、不思議と感じるものがあり、個室が与えられるハイスクール迄は彼と同室で過ごす事を選んだ。

 年長者の立場から豊富な助言を聴けることも魅力であった。

 幾分過激と思える彼の思考は当時、聴く者に目的をもって生きることを自ら撰ぶ当たり前さを薫らせた。


 のちにその死をもって、慕ってきた者達をすべからく落胆の canyon に彼は突き落としたのだが__



 遺伝子研究関連の今の両親の元へ引き取られた私と同じく彼も乳児期、実業家に里親に出されており、反りが合わなかったのか自ら進んで家を離れ此処に来たらしい。

 生みの親と里親への反発心は、恨みを伴い精子提出が始まった頃から抑えられぬものと為り、向けられる先が大人全体社会全体へと拡大し、果てには自分の存在否定へと繋がっていった。

 エイドリックが違法の娼婦宿に行き出した理由の根底にそれはあったのと思われる。



 私達は精子提出が課せられてから、その速やかな達成の為と請求すればその様な場所に通える、偽造した一時的身分証明を手渡される。

 勿論行き来が許されるのは正式な登録店、そして特記されるのは教団から推奨されている店だけである。


 清潔、且つ病歴の無い相手と一度きりが原則。

 常にクリーンな環境にいる私達が違法な場所に立ち入るだけでも、何等かの病原菌を貰う怖れを有するくらい誰もが理解している。 況や危険度が増す店を、調べて迄行く者などいない。

 普通はそうだし私もそう思っていたが彼は違った。


「俺達は種馬じゃ無いんだぜ。愛なく精子を出せとか言う奴らに従う事なんて無いだろ? 愛を見つけに行くのに善悪なんてないさ。」


 彼の主張も間違ってはいないのだろう。

 しかし所詮は金銭目当ての交流の場。 そんな処で愛など見つかるまい、直ぐに飽きると考えた私は止めだてはしなかった。




 が、私は勘違いしていた。

 彼が言った愛とは、愛してくれる相手では無く、愛せる相手だったのだ。


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