第8話 Fig_02
" __と或る年(敢えて或る年と記しておく)を遡っての二年間、その24ヶ月間、 |Solnedgang i Darjeeling《ダージリンの夕日》 にあっては、期間合計特殊出生率(一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均を示す)が全世界(ここを除く世界中の都市)の平均値の約1000倍を上回るに当る新生児が生まれた。
それは生殖不全者と生活を共にする家族間、地域から生まれたものである。
その家庭家庭について遺伝系を遡り調べ、当人(新生児の両親)達の嗜好、環境など生活全般についても詳細に研究されたが、“なんら他との違いは見受けられ無い”と公式発表される。
そして世界からはここ |Solnedgang i Darjeeling《ダージリンの夕日》 は『奇跡の村』と称賛され呼ばれるに至った__ ”
“ __以下ウィルター氏の著書より抜粋
《我々夫婦はオーストリアから移り住んだ者の末裔同士で、同じ郷里を持つ者として親しみを覚え結ばれた。
二人には生殖不全の兄がそれぞれにいるが、私達はそれとは関係無く幼い日よりこの村で過ごしてきた。
彼女の家は雑貨店を営み私の生家は農業をしていた。
結婚して11年間子供を授からないでいたが、この村には適切な医療施設が無く不妊治療は受けられなかった。 また受ける条件下にも無かった。
食物も選ぶ事なく何でも食したし、生活水準は周りと比較して上でも下でも無かった。
「どうやって出産までこぎつけたのか?」と周囲からも何度も質問を受け続けているが、私達夫婦には全く思い当たる事柄が無いとしか言えない。》__ ”
“ __その頃の各フィールドワークの集計結果では、受胎(受精卵の子宮内膜への着床)する迄のケースは頻繁に見られるが出産に至らないのが大多数を占める*S-1、と報告される。
又、この二つが凡そ同数とあり、昨今と同様である。
つまり、妊娠は可能であるカップルは世界に溢れていたが、難を逃れ新生児を抱くことが出来た家族は極々稀、と云うことになろう__ ”
“ __この国が設立された年代前後に『出生数低下が生殖不全者に起因する等揶揄された事は根も葉もないことであった』と、マスメディアが挙って訂正する訳であるが、依然その内である者への偏見は続くのは悲しい現実であり、消えることを強く望んで行きたい。
併せて、安定的人口置換水準に戻すべく原因・要因の追求続行と研究枠・機関の拡大が更に求められる。
*S-1 出産に至らないケースの原因としては、胎芽のままでの受胎産物の排出、妊娠初期中に生育不全での胎児死亡がある__ ”
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