第4話 Ficus_03
読み終えた一冊と他数冊を処理中の区分け箱に納め、小用を済ませに行くついでに外の空気を吸おうと考え立ち上がり、背中を伸ばした。
私の名は
正式な『無精子症』の診断書と入国許可証を取得しそれに司書免許(どれも所謂、
広大な敷地をもつこの旧国営図書館は、建物自体は史跡に近い古さであるが、世界中から寄附された資金で誂えた設備は最新である。
全てがオートメーション化されており、所蔵する書籍や記録物の管理は勿論のこと、出入りする人の情報、他
返却された物を棚へ直すのも機器が勝手にしてくれるし、冊子を持ち出せば入口に有るセンサーが何処の誰が
私が従事しているのはそういう類いでは無く、主に古書の修復とこの受付けである。
偽者なのに可能かといえば、其れはそれなりに習得済みで此処には来ている。
貸し出し可能な書籍は半永久保証を受けられる材質の物に限られていて、一階二階に置かれている物は全てがその紙質の物ばかりである。
三階は貴賓フロアーとなっていて特別な人間(つまりは投資者・各エリアの関係者か貴人・学識者と認められた者)のみが許されるエレベーターで上がる。
ゆったりと寛げる個室は50室余り存在し、上等そうな調度品がシックで明るい色調の室内や通路に適度に配置されていた。
空調は人間では無く、持ち入る書物に適した温度と湿度に保つよう設定されている。
このフロアーの各部屋で紐解かれる本達は、或いはその人間よりも数段価値の高い物と謂えた。 半永久保証審査を受けない、それ依然に製造出版された超レアな著作物ばかりで、つまりは変色したのち劣化破損し、形を留めなくなる運命の、個人では無く世界が所有するお宝なのだ。
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