ワクチンハラスメントに遇った

水原麻以

ワクチンハラスメントに遇った

端的に言うと「打ちたくても打てない」人が接種者からバカだの幼稚園児だの人殺しだの散々罵られたのである。これが世間に言うワクチンハラスメントか、と実感した。同時に無知って恐ろしいと震えた次第。


まず、断っておくが新型コロナワクチンの接種は任意である。

正確には努力義務であるが、予防接種法の付帯決議によれば接種をしない人を「決して」差別してはいけない、と定められてある。

SNS界隈では勝手な解釈で接種を義務であるかのようなデマ(殆どが知識不足と手前勝手な思い上がりによる事実歪曲)が拡散している、が、法律は法律である。


予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議


’二 新型コロナウイルスワクチンを接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではないことを広報等により周知徹底するなど必要な対応を行うこと’


www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/kourou95509A0BDB55A3044925862400328414.htm


とまあ、はっきりと明記してあるので、誰が何といおうと接種してない人をバカにしたり、シフトから外したり、解雇してはいけないのである。


なぜ、接種しない人間の存在が許されるかというと、これも法律に書いてある。


三 新しい技術を活用した新型コロナウイルスワクチンの審査に当たっては、その使用実績が乏しく、安全性及び有効性等についての情報量に制約があることから、国内外の治験を踏まえ、慎重に行うこと。


『データが少ない』『実績が乏しい』のだ。だから、国としても胸を張って「問答無用で接種せよ。これは命令である。従わない奴には罰則を喰らわす!」と強気にはでれない。

もちろん、だからといってワクチンを接種するなとは私は言わない、いや、言う資格すらないのだ。皆さんが自己責任で考えればいい。


だって、これも上記2項、3項を踏まえて一番最初に書いてある。


一 新型コロナウイルスワクチンの接種の判断が適切になされるよう、ワクチンの安全性及び有効性、接種した場合のリスクとベネフィットその他の接種の判断に必要な情報を迅速かつ的確に公表するとともに、接種するかしないかは国民自らの意思に委ねられるものであることを周知すること。



「じ…自己責任で打ってね(震え声)」ということだ。


世間には5G電波がどうこう月刊ムーに載りそうな怪談も出回っているらしい。


それを踏まえて、だ。【自分で考えろ】と国は言っている。


それなのにネット界隈は「接種は義務だ義務だ」と騒がしい。

彼らの言い分はこうだ。「医療関係者の矜持として患者を感染から守る責務がある。だからスタッフの全員接種は義務!」

その意気込みは良いのだが、スタッフ全員を説得して納得づくのうえなら良い。

違法な実力行使をして【考える権利を奪う】からいろいろと問題になっている。


それは、ともかく。

ワクチンハラスメントがとうとう私の眼前で起きた。

周知のとおり、新型コロナワクチンの接種はアナフィラキシーの問題などがあり、接種を希望してもかなわない体質の人間がいる。接種義務論者はそのような不適格者は職を辞すか配置転換されるべきだという。


今回、私が逢ったケースはそれ以前の問題だ。

【行政の不備で接種できない】状況にある。



関西の某都道府県でもワクチン接種券の発送が始まった。告知というか風の噂によれば令和3年7月7日からの予定だと聞いていた。だが実際は5日あたりからフライングで届いた世帯もあったようだ。問題は今朝の事だ。


ある女性スタッフが早速、接種を受けたらしく接種済証明書をひけらかしていた。

そして、こんなことを言い放つ。

【大切な障害者の方々を守る為に

すぐさま数名の同僚が賛同した。


その行為自体は私は否定しない。事情があって接種がかなわぬ者たちのために免疫力を着けて欲しい。ぜひとも、接種できない疾患者を守ってあげて欲しい。


これで済めば美談で終わった。

人間という物は権威を得た途端に傲慢不遜になる。


黙っておけばいいのに、私に接種の有無を問うた。


某自治体では7月6日には電話予約、ネット申し込みが殺到しあっという間に定員に達したという。もちろん、この時点で私は接種券など持つ由もなく

「いいえ」と正直に答えた。


ここから先は思い出すのも腹が立つ。

未接種という理由だけで黴菌のごとく忌避され、介護職の資質を問われ、人格と人間性を疑われ、しまいには知能指数を「幼稚園児レベル」と認定された。

私以外にも、もう一人、未接種者がいたのだが彼女は無言で早退してしまった。

その背後を心無い罵声が追い打ちする。当人の心身に障害がある、とのたまうのだ。

もちろん、事実無根である。

私は耳を疑った。だって、職場は障害者施設である。現場スタッフにあるまじき言動だ。

【接種券の有無】で生殺与奪が決まるのか。接種済証一枚で人間の価値が決まるのか。

たかが紙切れ一枚。それも永劫不滅でなく抗体に有効期限があるワクチンを【いつどこで接種しました】というだけのものでしかない。


こんなもので自尊心を保てるとは、なんと薄っぺらで哀れな人たちなのだろう。


さて、ここまで虚仮にされて引き下がる私ではないので、打つ打たないは別として【今現在、接種できる状況】にあるかどうか、調べてみた。

その結果、自治体内の接種可能な病院、施設を洗いざらい電話にて問い合わせた。

結果は惨敗である。受付開始直後に予約が殺到し、満杯になったという。

キャンセル待ちが出来る状況ですらない。

ネット予約も同じ。ワクチン供給の目途が立ち次第再開するという。


このように、個人の力ではどうにもならない【不可抗力】という物が存在する。

自助努力、自己責任、創意工夫、精神力、思いやりの気持ち、勇気と知恵で行政の不作為をどう解決しろというのだ。


いや、それを超越した問題がある。

法律には書いてあるではないか。

「未接種者をいかなる理由でも差別してはいけない」

「接種は自分で考えて決めろ」


ワクチンの接種をするかしないかで後ろ指をさされるいわれはないのだ。

そして、せっしゅしたか、しないか、その理由は何か。

赤の他人に尋問されるいわれもないし、申告する義務もない。回答する責任も無い。

【そうしろ】と法律には書かれていない。


もちろん、法律という物は盤石でない。任意が義務になり、申告が責務になれば私は当然、したがう。


しかし、法に任意であり、差別はいけない。と書いてある以上はわたしは法に沿う。

接種したい人はすればいい。私に止める権利はない。

むしろ、今回のように希望者の機会が奪われるような時は憤る。どうして接種させてあげないのだ!と。

同様に、接種しない人、したくても出来ない人の権利も尊重したい。


というわけで、【個人の力ではどうしようもない】状況で起きたワクチンハラスメントの報告を終える。


理由はどうあれ決してゆるされるべきことではない。

文句や不満があるなら、法の不備を個人に責任転嫁せず、行政府や立法府に要求するのが順番として先だろう。【義務化しろ】と。

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ワクチンハラスメントに遇った 水原麻以 @maimizuhara

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