第22話 山ミミズが大暴れ

「それでは各グループ集まれー」


先生の声に各グループがスタート位置に集ま

り始め、午前10時、先頭のグループからハ

イキングコースを進み始めた。


「嫌な予感しかしない…」


「大丈夫、私達がついてるし」


「マコト、本当にありがとう…この世界の高

校生は皆こんな事やってるの?(小声)」


「う〜ん、まあ大体…」


「嘘だろ…」


「まあまあ、気楽にいこうぜ」


「緊張…します…けど大丈夫…」


「片山さんもそう言ってるし、そろそろ行く

か!」


ケンジ達が入り口から森に入ると、鬱蒼とし

た森の中に不自然に整備された道がある。

(自分の記憶にある大山と違う…)

そうだ、ここは自分がいた世界と違うパラレ

ルワールドなのだと言い聞かせた。


「わ、わあー!助けてー!」


すぐ近くの道から悲鳴が聞こえる。


「ちょっと行ってみよう!」


「え?山ちゃん!?行くの!?」

皆が駆け出して行くのに慌ててついていくと

道の曲がり角の先に、巨大な丸太のよう太

く、長い胴体が見えた。


「ちょっと待って!あれ何!?」


「あれは山ミミズ!」


「嘘でしょ?!ミミズなのあれ?」

片山さんが詳しいのにも驚いたが、ミミズの

サイズたるや、もはや怪獣だ。


マコトが、腰を抜かしている同級生の元に駆

け寄ると、少し離れた場所に退避させた。

「どうしたの?!」


「後ろから急にアレが現れて…1人食われた

んだ!」


(はい?!人食べられたの?人捕食するの

アレ?!)


「死ねやオラア!!」


片山さんが普段の様子からは信じられない程

のアグレッシブさで、巨大ミミズの胴体を拳

で殴りつけると火柱が上がった。


「フフフフフ…寝る間を惜しんで考えた炎の

魔導を拳に込めて殴る術式…炎術格闘をやっ

と試す事が出来た…待ってたぜぇ!この瞬間

を!」


いやいや、アナタ、※特攻の拓位キャラ変わり

すぎだよ!

そんなツッコミをする間もなく悲鳴がケンジ

の思考を遮った。

※神奈川を舞台にした族漫画のバイブル


「ケンジ!避けてー!!」


「ワアアアアアアア!!」

突然"レーザー光線のような何か"がケンジがい

た場所を横切った。

地面が鋸で切ったように溝が出来ている。


「今度こそ!ふんっ!」

マコトが水を放つのだが、彼女の放つ水は激

流でもボール状でもなく超高圧なのだ。

まるでレーザーのようにスパスパ辺りの木を

切ってしまう、とてもコントロールが悪い。

暴れる山ミミズには当然当たらない、それど

ころか自分達に当たりそうになった。


「あ!ごめーん」


「俺に任せろ!うらああああ!」


「山ちゃん待て!それ普通のハンマー…」


山ちゃんが10ポンドハンマーを振りかざす

と山ミミズに振り下ろした、ミミズの胴体が

吹き飛び千切れる。魔導力を込めたハンマー

は市販の物でも強力な武器だった。


「ケンジ!頭がそっち行った!頼む!」


いやいや無理無理!クルマのタイヤかと思うバカデカい口の中にトゲトゲがいっぱいあ

る。あんなの洒落にならない。


しかし避けるには時間も距離もない。


咄嗟に木刀を思い切り振り下ろした。

一瞬、辺りが真っ白になったかと思うと、凄

まじい衝撃波が起きて山ミミズを"吹き飛ばし

た"山ミミズの頭の部分は何もかも無くなって

いた。


「は、はは…助かった」


「ケンジすげー、頭吹き飛ばしたよ」


「ケンジ君…いい威力でした…」


この前、竹刀に魔導力を込めて振り下ろした

ら体育館のドアが吹き飛んだ。

今度は木刀に魔導力を込めたらモンスターが

吹き飛んだ。

魔導力は使い方を誤ると危険だ、ふとした拍

子に出ないようにしないと、とんでもない事

になる。僕は少し手が震えた。

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