第21話 装備は現地調達(お土産物屋さんで購入)
「ケンジもそんな装備で大丈夫か?」
「体操服にジャージ…リュック?」
「いや、服とリュックは百歩譲っていいとして
武器を装備してないのはマズい」
「そんなもんなのか…」
山ちゃんに言われて、近くの土産物屋で木刀
を買うと修学旅行の土産物屋さん近くでよく
見られる学生のスタイルになった。
「山の麓にある土産物屋さんや観光地にある
土産物屋さんで木刀が売られているのは、
昔魔獣や山賊出た時代に身を守ったりする為
に売り出した木刀の名残りなんだよ」
「ええ?!嘘だろ?」
「ここはケンジがいた世界と違うんだよ」
「そんなモンか…ちょっと思ったんだけどさ
参加している生徒の数、一年生全員じゃない
よね」
「ああ、"市民"の生徒は危険だから参加しない
んだよ、でも参加しないと成績つかないだ
ろ?その代わりにワンゲルの運営に関わって
成績をつけるんだ」
「ああ、なるほど」
テントの中でホワイトボードに予定を書いて
いる生徒や、トランシーバーで何処かに連絡
している生徒、会場整理や参加者の管理、
中には出店を出している生徒もいる。
皆、何かしらを見つけて取り組んでいた。
「こんにちはー☆インタビューしていいです
か?」
ゆうこりんこと沢田先輩が、カメラクルーの
生徒を引き連れやってきた。
(そうか、ゆうこりんもカメラの人達も"市民"
なのか…)
「今年の注目度No1男子、1年2組の龍騎
士宮本君でーす!」
(龍騎士宮本ってダサ過ぎる、恥ずかしいから
勘弁して!)
「さあ!今日の意気込みを聞かせて下さい!」
「…えと…あー、皆と一緒に無事帰れるよう
に頑張ります…」
「そんな龍騎士宮本君の今日の装備を拝見!
突撃!隣の冒険者のコーナー!!」
(そのコーナー、絶対今作ったろ!)
「え〜と、さっきそこのお土産売ってるお店
で買った木刀です…」
「スタートまであと少し!CMの後は今回の見
所を実行委員長の校長先生に伺いたいと思います!テレビの前の皆さんチャンネルはその
まま!」
「はい!CM入りまーす」
沢田先輩はカメラクルーの合図でカメラから
振り向くと開口一発目で文句を言って来た。
「君ー!ダメだよ!もうちょっとさぁーなん
つーの?かかって来い位の事言えない
の!?」
「ご、ごめんなさい」
「龍騎士なんでしょ?」
「はい…一応…でも仲間がいるから参加出来
るし、あんまり大きい事は…」
「ふーん…」
そう言うと沢田先輩は僕と山ちゃんやマコ
ト、片山さんを見た。
「なるほどね」
「へ?」
「ま、無理せず頑張って」
そう言うと沢田先輩達は立ち去っていった。
「なんかよく分からない人…」
マコトの言う通り、よく分からない人だと思
った。
一方で沢田優子は思ったようなコメントは得
られなかったが、少し満足していた。
ケンジに剣道を教える2年の神林美奈は彼女
の同級生で友人だった。
あの堅い、剣士の家庭に育った彼女が最近は
ずっと「ケンジ、ケンジ」と彼の話題ばかり
口にするのだ。
確かに宮本賢治はレアな適性持ちにありがち
な驕りも選民意識も、プライドの高さも一切
ない。むしろ目立つ事を嫌っているように
すら感じる。
堅物な美奈が彼を嫌わないどころか、むしろ
毎日熱心に剣道に取り組む姿勢から彼に好意
すら抱き始めている。
しかし沢田は"謙虚"の言葉で説明がつかない
違和感を感じていた。
宮本賢治は謙虚ではない、何かから本性を隠
している。今後面白くなりそうな取材対象だ
と分かり、収穫はあった。
「ちょっと面白そうじゃない」
そう呟くとまたカメラの前に立った。
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