新入生オリエンテーション後編

第20話 ついに始まってしまった

2020年6月15日火曜日0900

大山根の元神社付近


「それでは皆さん並んで下さいー」


遂に新入生ワンダーフォーゲル当日になって

しまった。

沢山の生徒達が白い業務用テントを立てて

いたり、引率の先生の元で表示用のポール

やトラロープを張っている。


体操服にジャージ姿のケンジは、曇天の空以

上に顔がくもっていた。


「遂に来ちゃったか…」


「ケンジ、顔色悪いぞ大丈夫か?」


「山ちゃん、この世界本当におかしい」


「大丈夫だよ、私達もついてるし」


「マコトが回復術使えるのはマジで助かる、

本当に助かる…で、片山さんは何故ここに…」


「私も…ケンジ君達と…(小さい声で細部不明)」


「う、うん、とにかくよかった、魔獣が出た

ら宜しくお願いします…山火事にならない

程度に…」


「なんでアンタが私達のグループにいるの

よ!?」


「チッうるさいわね、ワンゲル始まる前に

焼き殺すわよ!」


「…おい、ケンジなんで片山さんまでここに?しかも性格が違くない?(小声)」


「まあ、色々ありまして…(小声)」

(図書室の二の舞はごめんだよ…)


「はーいそこ!すぐ並ぶ!」


「あ、すいません…」


生徒達は広場に集まると、大きい眼鏡を掛けた女子生徒がマイクを持った。


「さあ!それでは今年も新入生ワンダーフォ

ーゲルはっじまっるよー!今年の司会は三谷

高校放送委員2年沢田優子が務めます、ゆうこ

りんって呼んでね!さあ今年は何人生き残れ

るか!この新入生ワンダーフォーゲルの模様

は、テレビ神奈川、FM横浜で実況中継され

ます!早速校長先生からのお言葉です、校長先

生!よろしくお願いします!」


(デスゲームかよ…)


「おはようございます本日は天候に恵まれ…」

この世界でも、校長の話は長い。そして天候

は全く恵まれていない。恵まれているとすれ

ば多少涼しい位である。

要約すると生徒の能力やチームワークをこの

ワンダーフォーゲルで見たいそうだ。


しかし周りを見渡すと、剣士の適性を持つ学

生は胸当てなどの防具に剣を持ち魔術士の適性を持つ学生はそれぞれの特性のケープを着

ていた。スタートを待つ生徒の中で体操服に

ジャージは自分だけである。


マコトも水色のラインが入るケープ、片山さん

は赤いラインが入るケープを着ていた。


「山ちゃんもさっきから気になってたんだけ

どそれは…」


「これ?ああ、仕事で使う作業用オーバーオ

ールに10ポンドハンマー」


「え?」


「10ポンドハンマー、親父の会社から借り

てきたんだ、親父が今のお前にはこれで充分

ってさ」


「何に使うの?」


「そりゃあ魔獣を頭からズドーンって…」


「あはは…なるほどね」


よく見ると、オーバーオールにも山本鉄工所

と企業名が刺繍してある。

お父さんもよく貸したな!と頭の中でツッコ

ミを入れてしまった。

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