第18話 山ちゃん
夕方、駅から帰る途中自分の魔導力を手の中
で握ったり離したりしていた。
神林先輩にしこたま怒られ、学校の先生にも
怒られてしまった。
(僕は魔導力の体内の蓄積と放出が出来てる?
龍騎士は"こちらの世界の僕"の適性じゃない
のか?)
初めは煙をぶつけるような感覚であったが、
今は紙を軽く飛ばす、そよ風みたいなものを
作り出す事が出来るようになった。
「お、ケンジじゃん!こんな所でどうした?」
「あれ?山ちゃんこそ」
山ちゃんは三谷高校の近くに住んでいるから
自分の住む市にいる方が珍しい。
「社長…あ、親父に言われて試作部品の納品
の帰りよ、もう仕事上がりだから"おいでや"
行こうぜ」
僕の学校の通学路には昔ながらの駄菓子屋が
ある、この"おいでや"は小学生の頃からよく
立ち寄る場所だった。
「よく知ってるね、この場所」
「この前たまたま見つけてさ、そっかケンジ
には馴染みの場所か」
おいでやに行くと子供は既に帰ってる時間
だった。
「おじさん、カキ氷2つ!」
「リッチにブルーハワイいっちゃうか!」
勿論高校生のバイト代やお小遣いで十分買え
る金額なのだが、未だに子供の頃なかなか食
べなかったブルーハワイはなんとなくリッチ
な感じがする。
「梅雨も近いし、もう暑いな」
「山ちゃんとこは工場だから余計に暑いん
じゃない?」
「まあね」
少し沈黙が流れる。
「実は、少し前から聞こうと思ってたんだけ
どさ」
「うん」
山本は周りに誰もいない事を確認すると唐突
に切り出した。
「お前誰?…ケンジだけど違うよな?」
カキ氷を吹き出してしまった。
(マズい、バレてるよ!え?いつから?いやいや今はどうやって誤魔化すか…)
「何言ってるんだよ!そんな筈ないだろ、
漫画の見過ぎ…」
「…分かるよ、なんとなく、ケンジが出して
る魔導力がなんか違う」
(そうだ、魔導力は人によって指紋みたいに
違うんだ、同じ"僕"でも少し違うって…)
「それにこの前学校の休み時間、魔導力で遊
んでただろ?」
「う、うん」
「あの時、魔導力をカブト虫とか色々な物の
形にして遊んでたじゃん」
「うん」
(つい、楽しくなってやってたけど…)
「普通丸とか立体的な図形が精一杯で、自分
のイメージした物の形にするのは難しい技術
なんだよ」
「…」
「勿論沢山練習していたとは思う、最近ずっ
と図書室行ってたみたいだし…でもな」
「うん…」
「前のケンジは、その力を嫌って適性試験
すら拒否しようとした位なんだ」
「初めは変わった奴だと思ってた。話を
聞いたら小学生位の頃から魔導力の放出を
隠していたらしいんだ」
「でも今のケンジは、龍騎士の適性になろう
なろうと、龍騎士らしさを作ろうとしてい
るように感じる」
「あとケンジの魔導力のパターン…俺には
縞模様に見えてるんだけど、そのパターン
が微妙にケンジと違う」
「そうか…」
(確かに"この世界の僕"が、僕と同じ性格だ
とは限らないよな、そこまで観察されてた
なら仕方ないか…)
「僕はケンジだよ…でも、この世界にいた
僕じゃない」
※作者の一言
上手いキャッチコピーが思いつかず適当な言
葉を入力しています。
もし何か良いキャッチコピーがありましたら
是非キャッチコピーをつけて下さい。
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