第12話 神林先輩

2020年5月25日火曜日1645


選択授業が終わった学生は帰宅やバイト、

部活へと移動していた。

「小柳先生、何処へ行くんですか?」


「体育館よ」


「体育館…?」


体育館に着くと、中では女子生徒が剣道の

練習をしていた。

「お!いたいた!おーい」


小柳先生が剣道着に袴をはいたその女子に

声を掛けた。

「!…小柳先生、どうなさいました?」


「ちょっと頼みがあってね、彼を鍛えてやっ

てほしいんだよ、いいかな」


「ややっ…貴様は龍騎士の…」


小柳先生によって知らない内に話が進められ

ている。

妙に固い喋り方をする女子は三谷高校2年で

剣道部部長の神林…下の名前は知らないけど

この人は見覚えがある。

元の世界で受けた新入生オリエンテーション

の時に確か部活紹介で話していたような


でも体育館にはこの神林さん一人しかいない

元の世界ではもっと沢山部員がいた筈なのに


「宮本賢治です、宜しくお願いします」


「声が小さい!!」


(うわー…こんなノリかぁ…)


「宮本賢治です!!宜しくお願いします!」


「うむ!神林美奈だ!宜しくな!!」


「あの先生…これはどういう…」


「ケンジ君は龍騎士だけど剣は出来ないで

しょ?」


「そりゃまあ普通の高校生で、特に部活は

していませんでしたし…」


「だから剣技を身に付けよう!文武両道!

それが龍騎士!」


(マジかよ!最悪だな、まさかコレが嫌で

こっちにいた僕は異世界に逃避行したん

ではないか!?)


「ビシビシやるからな!気合い入れていけ

よ!」


「はい…」


その日から神林先輩にしばかれる日々が

始まってしまった。


選択授業の時は小柳先生と校長先生直々に

よる魔法の授業、そして夕方は神林先輩に

よる剣道の指導


昼休みには図書室で異世界に転移する方法

を探す事にした。


バイトして好きな事しようと思っていたの

に、いきなり打ち砕かれてしまったが、今

は元の世界に帰る方が先決だ。


龍騎士はこの世界の僕の適性であって僕は

単なる凡人だ、今はまだ高校生という環境

だからバレないかもしれないがいつか絶対

にバレる。


それに…この世界は理不尽過ぎる、元の

世界でも努力したからって何にでもなれる

訳じゃないが、産まれもった適性が人生の

大半を左右するなんて間違ってる。


適性が親からの遺伝によるものだし、出自

と素養で人生が決まるなんてそんなディス

トピア社会で生きていくのは絶対に嫌だ。


絶対に元の自分の世界に帰ってやる、絶対

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