第11話 デコピン
「つまりだ、君も龍騎士の適性通りちゃんと
修養に励むこと!いいね!」
「はい…」
(マジかよ)
「…とは言うものの、君は開眼もしてないか
らいきなり魔法云々言われても困るだろう」
「何ですか開眼って?」
「魔法、この世界で言う魔導力や魔力と呼ば
れている力を使う為には、産まれたばかり
の時に開眼する必要がある。全ての人が開
眼を受けることで魔力を大なり小なり使える
ようになるのだ、適性によらず誰しも必ず魔
導力があるからな」
「は、はぁ…」
「小柳先生、彼を押さえていて」
「はい、分かりました」
「な、何これ!」
見えない力で身体が押さえつけられ、身動き
が出来なくなった。
「さて、始めるかな」
校長先生がゴッツイ指をボキボキ鳴らして
ストレッチしている。
「ちょっと待った!ねえ!何するの!?」
「魔導力、いわゆる魔力の根源は額にある
実際に目がある訳ではないが"ちょっとした"
刺激でその力の源を解放させる」
「皆、赤ちゃんの時に受けるから軽く触れ
る位の刺激で開眼するんだけど…ケンジ君
は15歳で開眼だからね〜」
「小柳先生!?それどういう意味です?!」
「大丈夫だ、死にはしない」
そう言うと校長先生が僕の額に相当なパワー
で"デコピン"をした。
その破裂音に校長室の空気が揺れる。
「いったああああああああぎゃああああ!」
「小柳先生、彼は開眼したかな?」
「いえ、まだ半分です」
「よし、ならばもう一回」
「ちょっと待っ…っぎゃあああああああ!」
更にもう一撃凄まじい衝撃と校長室を揺らす
破裂音がした。
「校長先生、OKです」
頭がぐわんぐわん揺れている。
手足の先まで痺れるような、足が痺れた時
に末端まで血液が行き渡るような感覚が
全身でする。
「頭が揺れる…」
「そうだろう、生まれて初めて開眼したのだ」
(いや、絶対デコピンのせいだ…)
「でもコレで魔導力が身体に行き渡った筈よ」
小柳先生に言われて、試しにスマートフォン
を動かしてみたら前の世界と同じように
スムーズに動いた。
「あ!本当だ!前よりスムーズに動く!」
「前より?」
「はい、なんか昨日からスマホがやたら
反応悪くて不便だったんですよ!」
「…指まで魔導力が行き渡るようになった
からだ」
「あ、だからスイッチとか反応悪かったん
ですね朝も電子レンジ何回も押さないと動か
なかったり大変だったんですよ」
「宮本君、君は帰る方法が見つかるまでの
間この世界でこの世界の住人として…龍騎士
として頑張るんだ、いいね?」
「はい…分かりました」
(まあ…しょうがないか)
「じゃあ小柳先生、彼を頼みます」
「はい、分かりました、じゃあ行きましょう
かケンジ君」
「え?は、はい…校長先生ありがとうござ
いました」
「頑張るんだぞ!」
小柳とケンジが校長室を出ると、延間校長は
金庫からケンジの適性検査の結果を出した。
「我が高校が創設されて50年、初の龍騎士
の適性を持つ生徒…」
紙の一部を見るとため息をついた。
「神性がAAクラスか…もしかしたら本当に
異次元に転移出来たのかもしれんな」
(しかし…彼に"開眼"をした時確かに感じた。
彼は開眼する前から僅かながら魔導力が漏れ
出ていた、今の家電の多くは魔導力を検知
して動く物…それを開眼無しで使えたという
事は、違う世界から迷い込んだ彼自身も
また…)
「破魔の鏡一枚なら安いかもしれないな」
そう呟くと、延間校長は微かに笑った。
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