第10話 なりすまし

「え?じゃあ僕はなんでここにいるんです

か?」


「それは…」


「小柳先生…私から説明します。いいかい?

宮本君、単刀直入に言うと、元々こちらの

世界にいた君が、異世界に転移した疑いが

あるんだ」


「…え、ど、どういう事ですか?」


「我が校、いや…どの学校にも依り代となる

物があって…学校の宝と言うべきかな?

強い魔法の力が込められた物がある。勿論

この三谷高校にもあって、それは"破魔の鏡"

というものだ」

「その依り代を元々この世界にいた君が盗み

、破魔の鏡の力と何かしらの術式を使って

異世界に転移したと考えられる」


「でもさっきそんな事できないって…」


「その通り、しかし依り代が無くなった事、

一昨日隣の市で君の家の方向から大規模な

魔法の力が発せられた事、そして魔導に関する力も知識も全く無い君が異世界から突然

現れた事、本来こちらにいる筈の君が居なく

なった事…」


「状況から、本来こちらの住人だった君が

依り代と魔法の力で異世界に転移したと考え

るのが自然だろう、それに…大きな魔導力

を使う術式には何か代償がいる、恐らく別

の世界から来た君自身がその代償なのかも

しれん」


「なんでこちらの世界の僕が盗んだって分かったのですか?」


「魔導に関する力、君の世界で言う魔法の力

には各個人それぞれパターンがあるの。指紋

みたいにね」


「依り代をしまっていた結界と金庫に残され

た魔導力のパターンが…」


「僕だったって事ですか…」


「その通り、残された"こちらの世界の君の

パターン"と一緒だった」


「でもそれじゃあ僕が何にもしてないのに

犯人にされちゃうんじゃないですか」


「それは大丈夫、君は全く魔導力を使わない

生活をしていたから、パターンは似ていても

全く同じって事はないよ」


「そうですか…」


「だから私達も、君がこちらの世界の宮本君

ではない事が分かったんだ、小柳先生に最終

確認をしてもらったが、昨日君が学校に来て

教頭先生と話している時には大体分かって

いたよ」


校長先生は向き直ると真剣な顔で僕を見た。


「我々も君が元の世界に帰れるように色々と

調べて協力する、だから君も、元ここにいた

君の事や破魔の鏡の捜索に協力してほしい」


一瞬迷ったが、僕にはこの世界で何の手掛か

りも自分が帰る術を持たない。先生達を頼る

しかないだろうと納得した。

「はい、分かりました」


「あと宮本君、言うまでもないが君は龍騎士

だ、全く魔法が無い世界から来たとは言え

魔導力が一切使えず、何も修養しないまま

では皆に不審がられてしまう」


「は、はぁ…」

(何やら話が怪しい方向に進み始めたぞ)


「つまりだ、君も龍騎士の適性通りちゃんと

修養に励むこと!いいね!」


「はい…」

(マジかよ)


結局、僕は自分の世界に帰る方法が分かるま

での間"こちらの僕"に成りすまして龍騎士とし

て修養していくことになった。

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