第9話 いきなりバレた
振り返る小柳先生の顔がニヤリと笑った。
日が少し傾き始めた光に照らされ、一瞬空気
が固まったように感じた。
「やっぱり…君は"こっちの世界"の宮本賢治
君ではないね」
ヤバいヤバい!カマかけられた!
常識が違う世界では何をされるか分から
ない。
いきなりバレた…嫌な汗が背中を流れる。
すると先生が元の笑顔に戻った。
「大丈夫何もしないから、校長先生も事情を
知っているからまず君が知ってる事を話し
て」
「は…はい…」
とりあえずなるようになるだろう…と腹を
括る事にした。
しかしこれが更にとんでもない事になる
入り口だとはその時は思いもしなかった。
2020年5月25日火曜日1430
保健の小柳先生に連れられ、校長室の前まで
来た。
「そうそう、この世界の校長先生には初めて
会うのよね?」
「え?校長先生も違うんですか?」
「違う人よ、まだ気付かないだけで君のいた
世界と色々違う所があるからバレないように
気をつけてね」
「はい…」
小柳先生が扉をノックした。
「小柳です、宮本君を連れて来ました」
「どうぞ」
「じゃ、入って」
「はい」(声だけ聞くと普通、むしろ穏やか
な印象を受けるなぁ)
「失礼します宮本で…ヒイイイイイイ!!」
校長室の真ん中で、閻魔大王みたいなオッサ
ンが魔法使いの格好で宙に浮かんでいた!
「校長先生!何してるんですか!?」
「いや…魔法の無い世界から来た宮本君に
せっかくだから空中を飛ぶ術式を見せよう
かなと思って…」
「彼は違う常識の世界から来たんですから
少し考えて下さい!!」
「はっはっは、えー、気を取り直して…
初めましてかな?宮本賢治君、私は校長の
延間大輔です」
「よ、宜しくお願いします」
(閻魔大王って絶対あだ名付けられてる)
「まあ立ち話もナンだから座りなさい」
そう校長が言うと、椅子がスケートみたいに
滑って来た。
「ウアアアアアアア!!」
「校長先生!!」
「はっはっは」
校長先生が椅子に座ると深いため息をついた。
「宮本君、この世界に随分と驚いただろう、
大変だったね」
「は、はい」
(さっき散々驚かせたくせに)
「君は自分がいた元の世界に帰りたいかい?」
「はい、帰りたいです」
「そうか…」
そう言うと校長先生と小柳先生は顔を見合わ
せた後、少し俯いた。
「残念だが…君が元の世界に帰るのはかなり
難しい」
「え?」
「魔法で空間を飛び越えるだけでも凄い難し
いの。異次元から人が移動するなんて…君
の世界と同じようにこの世界の常識からでも
あり得ない事なの、いくら魔法がある世界
でもね」
小柳先生が本当に気の毒にといった様子で
説明してきた。
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