第6話 理不尽な世界

…この世界の父親と母親の苦労、そして妹が

何に怒り、不満を抱えているかよく分かった。


そして自分の適性がいわゆるレアな適性だと

いうことも初めて知った。


「龍騎士」は歴史上何回も登場している。

剣技と魔法を操り龍に乗る騎士は東西問わず

歴史の転換点となる戦いには必ずその姿を

現す。

また歴史上の偉人は龍騎士の適性を持つ人

が多い。


龍騎士以外にも希少な適性があって、希少

な適性と力を持つ人材は魔導省や皇宮魔導室

に勤めたり官僚や政治家になるケースが多い。


「皇宮って、この世界でも天皇陛下がいるん

だ…」


不敬と言われそうだが、正直この何でもあり

の理不尽な世界だと、RPGによく出てくる

凄い大魔道士か神を想像してしまった。


とにかく龍騎士の適性が珍しく、凄い特性な

事は分かった。

しかし、適性と出自で自分の人生が決まって

しまう世界なんて理不尽すぎる。

龍騎士というレアな適性が、逆に道を狭めて

しまう。まだやりたい事が何かも分からない

のにコレはキツい。

封筒が開封され、しかも紙がクシャクシャだったのは、恐らく"この世界の僕"は自分の適性

がかなり嫌だったのではないだろうか?


そして今確実に分かる事はここは僕がいた

世界じゃない。


更に言うならば「龍騎士」は"この世界"で

生まれ育った"僕"の適性であって僕じゃない

もし万が一全く魔法が使えないとか、別の

世界から来たとバレたら、良くない事だけは

分かる。


「…早く元の世界に帰らないと」


気が付くと日が落ちていた。

慌てて荷物をまとめると図書室の鍵を閉めた。


慌てて帰って行くケンジを校長室の窓から

養護教諭の小柳アリサがじっと見つめていた。


「やはり、彼でしょう」


「小柳先生もそう思いますか…」


「迷いや悩みがある生徒を善導する立場で

ありながら…彼の事に気付けなかったのは

情けない限りです」


「校長先生だけのせいではありません、彼に

関わってきた教師全ての責任です…それは

そうと一昨日のは…」


「あの隣の市から感じた魔法の波動、間違い

なく。彼が我が校から盗んだ破魔の鏡を使っ

たのでしょう」


「一瞬ですが、空に浮かび上がった術式が

見えました…今私も調べている最中ですが

…まだ」


「とにかく我が校の依り代たる破魔の鏡が

盗まれたのは事実…」


「魔導省への方は私から説明します」


「よろしくお願いします、先生…やはり彼は」


「はい、今日観察した限りでは、宮本賢治君

は間違いなくこの世界の住人ではありません」


「彼の事はしばらくの間、魔導省へは伏せて

おきましょうか、今はまだその時ではありま

せん」

「警察へも魔導省の指導を受けてからでも

遅くはありません」

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