第5話 パラレルワールド
ここに来たのは自分の中の仮説を立証する
為だ。
おかしい、この世界は間違いなく何かが違う
昨日まで自分がいた世界と似てるようで全く
違う。
ここはパラレルワールドなのではないか?
何かの原因で、このヘンテコな世界に来て
しまったのではないか?
この世界の"本当の自分"は何処かにいるの
ではないか?
そう思ったのだ。
歴史の本を手に取ると、ページをめくった。
手が震える、自分の知っている世界と随分
歴史が違う。
まず、魔法なるもの、「魔導」が存在する。
太古の昔より人智を超えた力として存在し、
それを操れる人が権力者や、権力者の側近
になった。
初めて行政や軍事に積極的にその力を取り
入れたのは織田信長であった。
この世界でも先進性がある人物である事に
少し驚いた。
近代史を見ると第二次世界大戦で負けた日本
はGHQの命令で皇室魔導院を解体し、
魔導庁に再編、2001年省に格上げされ
たと書いてあった。
「魔導省ってこれだったのかよ」
あの紙はかなり重要な書類だった、でも
何で"こちらの世界の僕"はクシャクシャに
して机に突っ込んだのだろうか?
「…なるほど、そもそも常識も歴史も全く
違うのは別の世界だからか」
しかし自分が知ってる文明…と言うか社会
と上手くマッチしているなと変に感心した。
次は魔導に関する本を手に取った。
ここから先は完全に未知の領域だ、つばを
飲み込んだ音が、やけにうるさく聞こえた。
基本的に魔導に関する力は誰しも備わって
いる。
魔導に関する力と適性が、誰しもに備わって
いて、努力で能力の長短を伸ばす事は出来て
も適性は変える事が出来ない。
魔導に関する力の強さや生まれ持った特性が
適性である。
適性は遺伝により継承され、ごく稀に親と
違う適性や先祖の適性が現れる事がある。
歴史と社会の本と照らし合わせて読み解くと
この世の職業や社会的な地位は適性によって
決まっていて、多少の努力があっても適性は
覆す事が出来ない。
適性が人生の殆どを左右すると言っても過言
では無いって事か…なんと理不尽な世の中
なんだ。
学校の先生になれる適性は賢者、僧侶、各
術師、騎士、侍…、飲食店は各術師、ハンター
…なるほど、適性と職業には幅があるのか。
適性の箇所を読み進めて、妹が言っていた
「市民」の意味が初めて分かった。
市民は、どの要素の能力も並か並以下で
特性を持たない事から何にでもなれるが、
適性が必要な役職にはなれず、逆に何にも
なれない。
政府、企業の上層部は全て何かしらの適性
があり、市民が就任したりそのポジション
にいるケースは少ない。
格差や差別、貧困が社会問題化している。
…この世界の父親と母親の苦労、そして妹が
何に怒り、不満を抱えているかよく分かった。
そして自分の適性がいわゆるレアな適性だと
いうことも初めて知った。
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