第2話 何その格好!?

支度を終えて自宅を出発する時も、母親が

適性検査の結果が出たらすぐ知らせなさい

と念押しをして来た。

とにかく朝から訳の分からない話に違和感

を感じつつ学校に向かった。


市内の高校には行けなかったから、隣町の

三谷高校に通っている。

頭が良ければ市内の偏差値の良い高校に行け

たのだけど、頭は並、努力の仕方も上手い訳

でも無い僕には行けなかった。

それでもまだ全国的に並に近いだけマシだ。


小学校で虐められた期間もあって、目立つ事

や脚光を浴びる事が嫌いだった。だから目立

たないように並で大多数の人に紛れている事

が居心地が良かった。


今まで人並みに勉強も遅れないように努力

して、それなりに人に合わせる事を覚えた

僕は、モテる訳でもなく、でも友人は少な

いながらもいる。そんな全く孤独でも無い

恵まれた環境にいた。


そんな現状に僕は満足していた。

妹が言った"市民"の何がいけないのか分から

ない。

両親がごく普通の一般市民である事に何が

不満なんだろうか?厨二病なのだろうか?


しかし、僕は妹が言った"市民"が、僕の考え

る"市民"の意味と全く違う事を、後から知る

事になった。


「おはよー」


大きな道路に出て、バス停に並ぶと後ろから

声を掛けられた。

数少ない友人で、同じ高校で唯一まともに

話す女子のマコトが話しかけてきた。


「おす、昨日風凄かったな…ってええ?!」


「…どうしたの?そんな驚いて」


「いや…だって…その、学芸会みたいな」


マコトの服装は、スカートこそ制服だったが

上着はまるで魔法使いのようだ。


「あ、このケープ?いいでしょ?この前の

適性検査で水術師だったから、お父さんが

今から着なさいって買ってくれたの」


「すい…じゅつ?」


「ケンジはどうだったの適性検査?」


「…適性検査って何…?」


「へ?ああ…そっか、変な事聞いてごめん」

マコトは何か違った方に理解したのか誤って

きた。

「いや…気にしないで」


とりあえず話を合わしておいて方がいい。

不審に思われたら困る、とりあえず何を見て

も何を言われても適当に話を合わせて驚かな

いでおこうと固く思った。


しかしそんな決意も駅に着いた時吹き飛んで

しまった。

通勤のスーツのサラリーマンや、制服の学生

に混じってマコトみたいな魔法使いの格好、

RPGの賢者や僧侶のような人が結構な数で

歩いていた。

中には侍のような人や仙人のような人も

いる。

「えええ…!?」


「ケンジ?どうしたの?!」


「いや、あの!あれ?!」


「何?いつもと同じ風景じゃん、別に術士

や賢者だって適性検査で適性があればなれる

んだから珍しくないでしょ!?」


「はい…そうだよ…ね、ハハ」


とりあえず落ち着きを取り戻した僕は、

マコトを誤魔化しつつ電車に乗る事にした。

いつもの北口にあったマクドナルドが、

怪しげな魔法のグッズを売る店に変わって

いた。少しショックだった。


「良かった、Suicaは使えて…電子マネーは

使えるんだな」


「なんか今日変だよ?」


「いや!いえ!カワリマセンヨ!?」


「そうかな…」

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