だから僕は龍騎士じゃない

HBの人

さよなら僕の世界

第1話 始まりの日

あの日から世界がちょっとだけ、でも完全

に僕の世界が変わってしまった。


最後の日の夜、何処か遠くで雷の音が鳴り

嵐のような風が、僕の部屋の窓をガタガタ

と揺らしていた事を覚えている。


今思えばあの日、あの過ごした1日が

裕福とは言えない、でも不幸でも無い

恵まれた高校生だった僕の、最後に

過ごした"普通の1日"だった。


2020年5月24日月曜日0700

朝起きるといつもと同じ朝が来た。


「おはようー」


階段を降りてリビングに行くと両親と妹が

テレビを見ながら朝ご飯を食べていた。


「おはよう、今日は普通に起きられたのね」


「うん、久々に起こされなかったかも」


「お兄ちゃん、夜更かししない癖にとにかく

寝るよね」


「なんか眠たくてさ、なんでだろうな」


食事をしている妹のアカネを見ると、イチゴ

ジャムを食パンに塗ってる。

「母さん、普通のパンある?」


「クロワッサンならあるわよ」


「んあ、じゃあそれで」


母親からクロワッサンの袋を受け取り、パン

をオーブンレンジに入れてスイッチを押すと

全く動かない。

「あれ?壊れた?」


「えー!?もう?買ったばかりなのに?」

母親がスイッチを押すと、普通に動き始めた。

「何言ってるのよー、壊れてないじゃない、

スイッチに魔力を入れた?!」


「え?何?(魔力?)」


「魔力と言えば懐かしいなぁ、俺も高校生

の時に散々鍛えたんだけどなぁ」


「え、え?」


「…まあ結局は市民レベルから伸びなかった

けどな」


「そりゃそうよ〜義父さんもひいおじいちゃ

んも市民だったんだから、いきなり魔術士

とかなれないわよ」


「…そ、そう…なんだ、ハハ(父さんも母さん

も昨日何か映画でも見てハマったのかな?)」


「そうだケンジ、お前学校で受けた適性検査

の結果はどうだったんだ?もう出たんじゃな

いのか?」


「え!?ああ…まだ、かな?(適性検査?

そんなのあったっけ?)」


「やだやだ、適性検査で将来決まっちゃうな

んてバカみたい、どうせお父さんやお母さん

も市民だし一緒でしょ?期待しても無駄だよ

お兄ちゃん」


「こら!アカネ!お兄ちゃんになんて事言う

の!」


「ごちそうさまー」


「あの子、中学生になってからずっとあんな

感じ!あなたからも言ってよ」


母親が父親に小言を言っているが、意味が

全く分からなかった。

「…?なんかおかしいな」


支度を終えて自宅を出発する時も母親が、

適性検査の結果が出たらすぐ知らせなさい

と念押しをして来た。

とにかく朝から訳の分からない話に違和感

を感じながら学校に向かった。

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