第3話 契約内容


「まず契約内容からね。私とリアムは対等な立場ってことをまず理解してほしい」

「あ、あぁ。でもなんで?」


 まあさっきも言われたけど、契約した時点で上下関係は無いってことだよな。でもなんでそんなに念を押すんだ?


「精霊と契約をしたら、私と契約者のどちらも、呼ぼうと思えば自分が居るところに呼ぶことができるの」

「え? じゃあ俺もティアに呼ばれたらそっちに行けるってことか?」

「そう! そこで対等な立場じゃなかったら、気が引けちゃって呼べないときとかあるじゃない? だから対等な立場をきちんと理解してほしかったの」

「そう言うことね」


 ティアが言っているのは一理ある。今でも少しティアのことを上の存在だと思っている。だけど、ティアが言っている通り、上の立場だと認識していたら、呼ぶのに躊躇してしまう時が、必ず出てくると思う。


「じゃあ契約内容を言うね。まずは精霊と契約していることを言わないこと。そして、私の力を使うには、リアムの信頼関係するの。それは私も同様。リアムと信頼関係が築けなかったら、魔力をもらうことができず、力を存分に使えない」

「わかった。それにしても信頼関係ね......。どうやれば築けるんだ?」


 精霊と契約したのを言ってはいけないのはよくわからないが、ティアが言うなら黙ってることにする。


 それにしても、昨日実家を追放された身からしたら、どうやったら信頼を築けるかわからない。なんせ今まで、家族には信用されている存在だと思っていたし、信用もしていたのだから。


 すると少し顔を傾げながら言われた。


「まあできる限り、一緒に居ればいいんじゃない?」

「だけど、ティアはこっちの世界にあまり入れないんだろ?」

「そうでもないわ。私の姿が他人に見えないだけで、こっちの世界に居る事はできるわ」


(そうなんだ)


 それを聞いて頷いた。


「それでこれが一番の問題なんだけど、ある一定の条件を満たさなくちゃ契約を破棄することができないの」

「え......?」

「私と契約しているのが嫌?」

「そうじゃないけど、ティアが......」


 別に俺はティアと契約しているのに不満はない。逆に感謝している。俺に魔力があることを教えてくれた存在。そして力を今後貸してくれる存在なのだから。


でもティアは違う。仲間に裏切られてしょうがなく、俺と契約をしてしまった被害者だ。精霊王なんだから俺の力を借りなくても十分あるだろうし、契約しているメリットがあまりないと思う。だから契約を破棄するのがすぐできないと聞いて少し申し訳なく感じた。


「私は別にいいわ」

「そっか。じゃあそれに関しては、その時になったら今度考えよっか」


 今考えても意味は無いと思ったし、契約を破棄する条件を聞いたところで何か変わるわけでもない。だったらこれに関しては後回しでいい。


「それで、私からのお願いは一つ。私に力を貸して」

「え? まあいいけど、何をすればいいの?」


 すると、真剣な顔で言われた。


「私を裏切った仲間は今、闇精霊としてこの世界を潰そうとしているわ。だからそれを回避したいの。それが私の仕事であって、私がなせば成らなければいけないこと」

「......」


 闇精霊ってどう言うことだ? 堕天使的な感じなのかな?


「その手掛かりが、この街にあるロッドリレル魔法学園にあるの。だからそこに通ってその手掛かりを探してほしい」

「まあ試験に合格出来るならいいけど、どうやって手掛かりを探すの?」


 そう。もし入学できたとしても、手掛かりを見つける方法が分からない。情報が無い状況で入学しても意味がない。


「それは簡単だよ。私と一緒で人と契約しているはずだから。多分私と今以上にリンク出来たら、リアムにも見えるようになるはずだから」

「わかった」

「じゃあ早速、そこに受験しに行きましょ!」

「あぁ」


 ティアに言われるがままロッドリレル魔法学園の受付に行き、入学試験の手続きを済ました。


 試験は来週であるため、そこまで俺とティアは魔法の練習を始めた。まず、全属性の基礎魔法を教えてもらう。実際には自分で魔法を使うことはできないが、ティアの力のおかげで難なく使いこなせるようになった。


(本当に使えている......)


 夢のようで現実な出来事。それだけで舞い上がってしまった。そんな練習する日々が一週間続いて、あっという間に試験当日になった。


 試験会場に向かったところで、マット兄さんを見かけた。


(兄さんも通うのか......)


 そう思っていた時、マット兄さんが俺に気付いてこちらに近寄ってきた。


「おい! お前も受験するのか?」

「はい......」


 すると蔑むような目でこちらを見ながら言ってくる。


「魔力ゼロのお前が受かるわけないだろ!」

「でも入学したいんだ!」

「まあ試験結果でわかるさ。お前がどれだけ無能であるかをな」


 そう言ってこの場を去って行った。マット兄さんに現実を突きつけられて、俯きながら歩いていたら、一人の女性が話しかけてくれた。


「大丈夫?」


 ティアとは別に、この出会いがこの世界で人生を少しずつ変えて行った。

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